「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間、うつを経験した医師が語る実際

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宮島賢也医師(写真提供:KADOKAWA)  

痛い思いや失敗を経験して、人は「生きる力」を育んでいきます。例えば、公園で子ども同士が遊んでいてケンカをしても、最近はすぐ親が介入してしまいます。

おもちゃを取った取られたという程度のことでも、すぐに親が「謝りなさい」と言ったり、「だめでしょ!」と注意したりする。なかには子どもに代わって謝ってしまう親御さんも。もちろん、事の状況次第で解決策も変わるでしょうが、親の過度な介入は、子どもの「心の成長」の機会を奪うことになります。

では、本当に親御さんの育て方に問題があるのかというと、そうではありません。実は「親御さん自身の育てられ方」に問題の根源があったりするのです。

クリニックで親御さんに話を聞くと、ご自身が「親に愛されていなかった」という方が多いと私は感じています。愛されていなかったといっても、虐待や放任などだけではなく、親に育てられていくなかでそう思い込んでいった、というものです。

例えば「母はいつも兄ばかりかわいがっていた」とか「父はいつも怒ってばかりいた」というようなこともそうでしょう。一言でいうと、親御さん自身も忘れている「過去の記憶」が、自分自身の子育てに影響しているのです。

過去の記憶は、コミュニケーションにおける1つのパターンになっていきます。無意識に自分が親にされていた接し方を繰り返していることもあれば、逆に、親にされたことが嫌だったから、自分は子どもに同じことをしたくないと思っている場合もあります。

でも、どちらのパターンも親御さんが自分の親から影響されていることに変わりはなく、過去の記憶が蓄積した結果です。親を反面教師にしている場合も、親にされたことをひっくり返しているだけ。一見、愛にあふれているような子どもへの接し方も、実は、親御さん自身の「過去の記憶」の影響を受けているのです。

(マンガ:うだひろえ)

子どもを追い詰める「ダブルお母さん」

ところで最近、「2人のお母さん」がいるご家庭が目につくようになりました。これまでは、「教育ママ」という言葉もあるとおり、子どもの塾や受験について調べたり、勉強に干渉したりといった、いわゆる「教育熱心」なのは母親がメインだったと思います。

私自身、母親が教育熱心すぎて、子どもの頃に苦しんだ経験があるのでよくわかるのですが、最近は「教育熱心な父親」も増えてきました。それが「ダブルお母さん」現象です。家の中に口うるさいお母さんが2人いる、そんな状態です。

子どもが家にいるとき、母親だけでなく父親もあれこれ干渉してくるとなると、子どもは家での居場所を失っていきます。

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