新元号へ走り出す、「平成」の観光列車の勝算 「炭鉱」から「観光」へデザインで生き残り模索

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かつての炭都としての輝きを失った今でも、にぎわった当時の面影を大いにとどめている平成筑豊鉄道。生粋のローカル線とは違う侘びしさは、こうしたところから感じられるのである。

そして、そんな侘びしさあふれる路線に、今春から観光列車が走る。

「ことこと列車」の車内。天井はステンドグラス、インテリアに大川組子を使うなど、豪華な雰囲気が漂う(筆者撮影)

その名も「ことこと列車」。JR九州の車両デザインでおなじみの水戸岡鋭治氏が手がける観光列車で、車内で供される料理は福岡市内の「La Maison de la Nature Goh」の福山剛シェフが監修した本格フレンチだ。

福智山など車窓の見どころでは、スピードを時速15kmまで落として走るなど、平成筑豊鉄道の沿線をたっぷり楽しめる観光列車になるという。

「思った以上」の仕上がり

この「ことこと列車」について、平成筑豊鉄道の河合賢一社長は「思った以上にいい車両ができた」と胸を張る。

列車のあちこちに配されている「ことこと列車」のエンブレムは、漢字の「事」をかたどった(筆者撮影)

「水戸岡さんにははっきり『ななつ星よりは劣る』と言われていますが、それでも予算以上のものにしていただいたなあと感じています。普通にパッと見ただけだと違いがわからないくらいで。料理についても福山シェフにいろいろと工夫をしていただけて、沿線地域の中でもだいぶ注目してもらっています」(河合社長)

だが、実際に平成筑豊鉄道に乗ったり沿線を歩いても、観光客の姿はなかなか見られない。福岡市内はまさしくインバウンドの嵐が吹き荒れているような状態なのに、約1時間離れた筑豊ではさっぱり。そうした中での観光列車導入はどんな狙いがあるのか。

「今までもいろんな工夫をしてきたのですが、沿線の人口減もあってなかなか経営は厳しい状態です。ですから、観光列車を目玉に据えて、これをきっかけにもっと乗っていただく機会につなげ、地域の産業振興にもなれば」(河合社長)

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