埼玉はいつから「ダサいタマ」と呼ばれ始めたか 高度経済成長期にベッドタウンとして成長

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その埼玉が「ダサい」などと言われ始めたのは高度経済成長が一息ついた1980年代前半だった。ほかの東京に隣接する神奈川県は、港町・横浜や湘南があるためイメージがよい。また、郊外としての距離感は埼玉とはそれほど変わらないと思われる千葉県も、埼玉ほどさげすまれることはなかった。

これは「海がない」という、埼玉県民がもっとも弱点と感じている点に根差しているからなのか。また、埼玉の非都会性があげつらわれ続け、それが一向に止まないのは、埼玉県民自体が、たたかれ、いじられるのが好きだから。そして、もともと東京に通勤する埼玉都民には郷土愛がないからなどとも言われる。

東京の人は関心外の地域なのか

一般的に首都圏では、人は自分の住む場所からより都会である方向、鉄道で言うと「上り」方向を向いて暮していると言われる。練馬に住む人は埼玉方面に行くことはなく、池袋へと向かう。川口に住む埼玉人に聞くと、大宮に向かうことはなく池袋に行くのだと。その理論に従うと、東京に暮すものにとって埼玉はまったく関心外の地域となる。

一方で埼玉の中には、東京人や他県人にとってはどうでもよいかもしれない「格差」が存在している。例えば浦和と大宮の闘い、西武池袋線・新宿線と東武東上線の覇権争い、東武東上線の和光市、朝霞、志木ではどこがいちばん幅を利かせているのかといったところだろう。

大宮駅、東京駅、大船駅を結ぶ京浜東北線(筆者撮影)

この「格差」を追求していくと案外興味深いことがわかってくる。埼玉都民の多くは、ただ東京への通勤の利便性や不動産価格を優先して埼玉県内の住みかを決めているのではと思いがちだが、案外そうでもないようだ。

身近な埼玉人がなぜそこに住んでいるか、埼玉のなかでの位階秩序、独自のブランド性とはどのようなものなのか。それらに関しては東京人、他県人が案外知らないナゾが秘められているようなのだ。

川口、戸田、和光、朝霞、志木、新座、所沢、草加、八潮、そして浦和、大宮といった土地にはそれぞれどんな特色があり、例えばそこに東京から移り住んでみたらどんな埼玉ライフを送ることになるのか。あくまでも“東京目線”で、“埼玉”各地の個性を追求していくと、そこに見えてくるものはどんなものなのだろうか。

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