経団連会長の「原発巡る公開討論」早くも腰砕け 脱原発団体が呼応も、経団連は「時期尚早」

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原自連は昨年1月、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案(骨子案)」を公表。各政党に脱原発への取り組みを要請した。これに呼応する形で立憲民主党は昨年3月、社民党など3野党とともに「すべての原発の即時停止、5年以内の廃炉」などを柱とした法案を国会に提出した。だが、与党の反対から審議に入れないまま、現在に至っている。

そうした中で、中西会長による「公開討論」の発言が飛び出した。中西会長はその後の1月15日の経団連の定例記者会見で、「原発の再稼働はどんどんやるべきだ」と発言。内容を報じた読売新聞(1月16日朝刊)によれば、この場でも「公開での討論を行いたい考えを示した」という。

同じ時期に、自身が会長を務める日立がイギリスの原発事業の中断を発表、多額の損失処理に見舞われることが明らかになっている。原発推進がままならない中、国(経済産業省)任せでは事が進まないとの焦りからの発言とも読み取れる。

試される中西会長の度量

しかし、中西会長は早々にトーンダウンした。2月14日に中部電力・浜岡原発を視察した中西会長は、「まずは提言をつくることが優先課題」と記者団に答えた。

2月14日に記者会見する原自連の吉原毅会長(右)と河合弘之事務局長(記者撮影)

原自連によれば「1月11日の公開討論会の呼びかけに際しても、まずは提言の公表を見てもらいたいとの返答があった」(河合氏)という。河合氏は「それでは意味がない。中身がまとまってから討論しても、今までと同じく意見対立にしかならない。だからこそ再び申し入れた」と説明する。だが、経団連のガードは堅く、門戸は閉ざされている。

日本では原発を含むエネルギー政策が国民的レベルで議論されたことは皆無に等しい。それだけに、中西会長の言動に注目が集まったが、早くも腰砕けになった。

吉原氏は「今こそ経済界と市民が本音で話し、問題解決に取り組むべきだ」と述べたうえで、「時期尚早」とした中西会長の翻意に期待しているという。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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