「電車より快適」バスが活躍する香港の通勤事情 住宅地から市街地へ「乗り換えなし」で人気
ところが、速さで明らかに電車に負ける競合ルートでもバスが走っている路線がある。わかりやすい例として挙げられるのが、香港国際空港と中心部を結ぶバス路線だ。
鉄道の「エアポートエクスプレス」は確かに快適だ。運賃は片道100香港ドル(約1400円)からとやや高いものの、市内のターミナル駅に着いてから地下鉄への乗り継ぎが無料だったり、周辺の主要ホテルへの無料バスが出ていたりと至れり尽くせりである。
しかし、充実した高速道路網のおかげで、地下鉄を乗り継ぐことを考えればバスは意外に速く、エアポートエクスプレスの半額ほどの値段で目的地へたどり着ける場所も多い。現在の空港が開港して21年目となるが、空港を発着するバス路線は減るどころか運転頻度も路線も増えているので、分厚い支持層がいると考えられよう。
高速鉄道駅でも地下鉄と対決
さらに、昨年秋に開業した中国本土とを結ぶ高速鉄道のターミナル、西九龍駅でも、目の前に駅がある地下鉄と真っ正面から対決する快速バスルートが3本設けられた。西九龍駅がオフィス街から若干離れた新市街区につくられたという事情があるにせよ、乗り換えのない快適な移動を求める人たちのニーズを取り込もうとする動きは非常に興味深い。
しかも、バスのほうが地下鉄より運賃が2~3割高いという強気の姿勢を打ち出している。こちらも「群衆に揉まれることなく、ドアtoドアで快適に行ける」というメリットを生かした乗り物であることは言うまでもない。
香港の2階建てバスは、ほぼ全車に無料Wi-Fiを完備しているほか、車内での携帯電話の通話も認められているので、急ぎの用事ができたときでも移動しながら十分打ち合わせができる。座って本を読んだり、メールを打ったりできるのは、満員電車にはない有意義な時間の使い方ともいえるだろう。
「鉄道」という単一のオプションにとらわれない柔軟な発想が支えている香港の「ちょっと長めの通勤バス」。日本、特に首都圏とは道路事情が異なるとはいえ、座れる通勤特急やライナーのない鉄道沿線などでは「座れるバス通勤」という手段がもっと考えられてもいいかもしれない。
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