最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由 「地域別」に設定している国はわずか4カ国

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地方創生を掲げながら、地域別最低賃金制度のもと、東京などとの最低賃金のギャップによる地方の衰退を誘導している政策は、明らかに矛盾しています。

「現状維持志向」と「想像力の欠如」が問題

最低賃金を都道府県別にすると、先ほど説明したような悪循環が生まれることは、ちょっと頭を使えばすぐに想像がつきます。しかし、なぜ今のような制度が長年放置されてきたのでしょうか。

私は、日本独特の「現実に則した物事の決め方」に問題があるうえ、「想像力が乏しい」からだと思います。この問題の根源を理解するためには、そもそも最低賃金がどう設定されているかを理解する必要があります。

厚生労働省のホームページには、最低賃金は次のように決まっていると書いてあります。

「最低賃金は、最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分に参考にしながら審議を行い決定します」

「地域別最低賃金は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており(以下略)」

要するに、最低賃金は福祉政策の一環で、生産性が低い場合には最低賃金も低くて当然と考えられているようです。

しかし、この最低賃金の決め方は大きな問題をはらんでいます。人口が減少し、その影響でデフレになった場合、この最低賃金の決め方では、最低賃金そのものがデフレスパイラルの悪循環を引き起こすことになりかねません。それと同時に、生産性向上という国策を骨抜きにする可能性もあるのです。

現実に則して最低賃金を決めようとすると、現状の支払能力を勘案し、事業者の今現在の予算を事後的にどう配分するかだけに終始してしまいます。この決め方をしていては、現状維持がせいぜいでしょう。

これでは経営者に刺激を与えることはなく、今まで通りに経営すればいいというインセンティブを与えることになります。生産性を高めるインセンティブが働かなければ、所得が増えることもなく、その地域の経済が次第に衰退していくことになります。

私が、今の最低賃金の決め方が想像力に乏しいと感じるのは、今の決め方が、「支払能力が固定であること」を前提としているからです。あたかも事業者の支払能力は変えられないと想定されているのです。

しかし、事業者の支払能力というのは、当然のことですが、可変です。変えようと思えば変えられるものです。生産性を向上させれば、事業者の支払能力も上がります。特に多くの地方にはインバウンドの観光需要が増加しているので、新しいビジネスモデルに挑戦する絶好のチャンスでもあります。

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デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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