最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由 「地域別」に設定している国はわずか4カ国
確かに、最低賃金の導入によって賃金の水準を大きく引き上げる必要があった地域に関しては、しばらくの間、起業のペースや新規雇用の増加率が相対的に低下しました。しかし、失業率が高まるなどの、既存の雇用者への影響は見られませんでした。
この事実も日本にとって大変重要です。日本ではこれから生産年齢人口が減り、企業数も減ります。ですので、既存雇用への影響は最も大事な確認事項になるからです。
一方で、最低賃金を上げると、それが刺激になって、生産性が上げられることが確認されています。
「最低賃金の格差」と「地方衰退」の悪循環
今までのように最低賃金の水準を都道府県別のままにしておくと、日本の地方はさらに衰退を続けることになるでしょう。日本は国土がそれほど広くないうえ、全国の交通インフラが整っているので、移動が簡単です。
このまま東京と地方の最低賃金のギャップが拡大し続けると、労働者は地方を離れ、ますます東京に移動してしまうでしょう。以下のプロセスで、地方の衰退が引き起こされるのです。
→人がいなくなるから、経済基盤が弱まる
→経済が弱いから最低賃金が上げられない
→東京などとのギャップが広がる
→さらに人がいなくなる
→東京などとのギャップがさらに広がる
このような「悪循環」としか呼べないループが、都道府県別の最低賃金により引き起こされているのです。
地方衰退の悪循環は、かなり前から始まっています。事実、地方の最低賃金水準と県民の数を比較すると、0.88という大変強い相関係数が認められます。2040年の人口予想では、その相関はさらに強くなります。地域別最低賃金が地方の衰退を引き起こしている可能性は極めて高いと思います。
前出の議員連盟の議論の中では、外国人労働者の受け入れも、全国一律最低賃金を導入するために考慮するべきポイントとされています。
外国人の受け入れを最も希望しているのは地方の事業者です。しかし、外国人労働者の訪日目的はお金を稼ぐことなので、とりあえず地方から日本での生活を始めたとしても、東京など賃金の高い都会に移りたいと考えても何の不思議もありません。
ですので、今までのように東京と地方の最低賃金のギャップを放置したままにすると、東京への集中は外国人まで巻き込んで、今まで以上に進むこととなるのです。
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