大人用おむつが、バカ売れするワケ ~市場規模1600億円、高齢者介護は壮絶な闘い~

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排せつ障害とは、トイレに行けない、トイレが使えない、トイレで排せつできない、という状態である。運動機能の障害に起因する場合、排便・排尿をつかさどる内蔵機能に起因する場合、さらにトイレで排せつする習慣を失った認知機能の障害に起因する場合などがあり、それらが複雑に絡み合っている。歩行できなくても、座位が取れれば、ベッドサイドにポータブルトイレを設置すればよく、おむつを付けるには至らない。

いずれにせよ排せつできないということは、社会参加できなくなることにもつながる。介助するにしても、本人の尊厳を大事にすることが何より欠かせない。

虐待するのは“身内”という悲劇

フリープロデューサーの残間里江子さんは、実母の介護でシャワーを浴びせていた際、しゃがんだ時に上から母の糞尿が降ってきて、初めて「覚悟を決めた」と振り返る。ある60代の父を自宅で介護する家族の1人は、「朝になると父のおむつが下がり、背中までびっしょりになっている」と嘆く。ほかにも、高齢で認知症を患い、便いじりをするようなケースもあるという。それだけ介護の現場とは、きれいごとでなく、壮絶なのである。

特別養護老人ホームや民間の有料老人ホームなど、施設における介護ならまだいい。ホームヘルパーたちはプロであり、もちろん慣れてもおり、介護保険のサービスの中でやっている。が、現実には家族が在宅で介護する方がはるかに多く、そこでは想像を超える重労働が待っているのも忘れてはならない。

2010年度の厚生労働省の調査によると、「介護でストレスがある」と回答したのは、女性で63.7%、男性で54.2%だった。参考までに、同じ厚労省の調査によると、10年度に起こった高齢者虐待のうち、施設従事者によるものが506件。一方、親族などの介護者によるものは2万5315件だった。虐待はあってはならないが、介護する側の負担を下げる方策も必要だ。

“介護うつ”や“老老介護”など、いまや介護は日本が抱える社会問題である。大人用オムツの需要拡大は、1億総介護社会の、ほんの一端に過ぎない。

(詳しくは週刊東洋経済12月14日号『介護ショック』をご覧下さい)

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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