社長交代の東京海上、「脱・自動車保険」の難題 損保代理店の8割は自動車保険に5割超依存

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GDP成長率が高く、保険の普及が見込める新興国市場にも力を入れている。昨年はタイとインドネシアの損保を買収。南アフリカの大手損保にも出資した。海外事業のうち新興国の利益貢献はまだ1割程度だが、「今後もチャンスがあれば新興国マーケットに打って出たい」と小宮氏は語る。

海外事業が拡大する中での課題は、グローバルに活躍できる人材の育成だ。これまで若手社員の海外研修制度や海外のグループ企業からの人材受け入れなどを積極的に行ってきた。永野氏からバトンを受け継ぐ小宮氏にも、次世代を担うグローバルリーダー育成の手腕が問われている。

一方、国内に目を転じれば、生命保険子会社である東京海上日動あんしん生命は順調に成長している。2000~2017年の保有契約件数の年平均伸び率は、生保市場全体が約3%に対して、同社は約11%。2018年度の事業別利益予想でもグループ利益の約3割を占め、海外事業に次いで利益に貢献している。

国内損保事業に漂う不透明感

高齢化の進展による「長生きリスク」への不安から、医療保険やがん保険など第三分野商品が伸びている。損保の膨大な顧客基盤に対して生保商品を販売する「クロスセル」が戦略の柱で、今後も「生損保一体モデル」を推進していく。東京海上日動の新社長となる広瀬氏は、現社長の北沢氏と同じくあんしん生命の社長経験者でもあり、生保事情にも明るい。クロスセル率は大手損保他社と比べて高いもののまだ2割程度であり、開拓の余地は大きい。

ただ、成長続ける海外事業と国内生保事業に対して、祖業の国内損保事業には不透明感が漂う。理由の1つが近年、自然災害が多発していることだ。「2016年に社長就任してからの3年間は自然災害に翻弄された」と北沢氏が振り返るように、地震や台風、豪雨などによる深刻な被害が損保各社を直撃している。

とくに昨年は6月から9月にかけて、中四国・関西を中心に豪雨や台風被害が相次いだ。関西を襲った台風21号による損害保険金(火災・新種・自動車保険)の支払額は約7500億円と、風水災被害としては過去最大となる見通しだ。

東京海上日動の保険金額は約2370億円となる見込み。大規模災害に備えて保険料の一定額を積み立てておく異常危険準備金を取り崩すため、利益に与える影響は小さい。これまでに積み上がった異常危険準備金は1兆円規模あり、同業他社と比べても潤沢だが、「もはや自然災害は異常ではなく、通常」(複数の業界関係者)になっており、楽観視できない。

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