地方鉄道の「模型」に詰まった開発のこだわり 「鉄道コレクション」商品化の決め手は話題性

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こうして製品化される鉄道コレクション、苦労する点を聞くと、まず1つは鉄道会社の許諾を取ることだという。鉄道車両を模型として商品化するにあたっては、まずその車両を保有する鉄道会社の商品化許諾が必要だ。しかし、ローカル鉄道の中には外部と商品化許諾などについてやりとりをする「窓口」となる人が決まっていなかったり、決裁権のある人がわからなかったりするケースもあるという。

また、製品化に向けて動き出すと、今度は細部まで車両の調査が必要だ。設計の前段階での下調べに数カ月をかけるといい、普段見えないところまで調べたうえで設計を行う。特に意識するのは「屋根」。模型は上から見る形になりやすいためだ。そして、難しいのは「色」だという。

アルピコ交通3000形の模型。「白」は再現が難しい色だという(筆者撮影)

「色は、お客様が気にされる重要なポイントです。特に『白』は正解がないですね。模型は実物より小さく、しかも室内で見るものなので白が暗めに見えるのです。色の見え方はとても主観的で、お客様は『心の原風景』として模型を求めるため、描く情景・色もさまざまです。それが『白』に凝縮されています。これは永遠の課題かもしれません」

愛着を持ってもらうツールに

こうして製品化された鉄道コレクションの購買層は、一般の鉄道模型と同じく30~50代の男性が中心だが、一方で地方ローカル線の駅で販売している商品については若干様相が異なるという。

例えば「(島根県の観光キャラクター)『しまねっこ』のラッピング電車など、キャラクターものはお土産にしたいということで女性人気が高いと聞きました」と担当者。地方だと新聞をはじめとした地元メディアに取り上げられて、一気に売れるということもしばしばあるという。

鉄道模型といえば熱心なファン向けの商品という認識が一般的だ。だが、キャラクターをラッピングした車両の模型が「お土産」として女性人気が高いという話からは、模型についての別の可能性を考えることもできる。

一般の人の目に触れやすい駅で販売されれば、地方の鉄道にとって地域や利用者と鉄道会社をつなぐツールとしても機能するだろう。 また、鉄道の歴史を「残し・伝える」存在としての価値もある。「造る意義を感じて」商品化したという関電トンネルトロリーバスの例があったが、メーカー側も模型として形に残す意義を認識して開発に取り組んでいることがわかる。

地元の車両が模型の題材となり話題を呼べば、地域の人々にも鉄道や車両の歴史的価値を認識してもらったり、鉄道に愛着を持ってもらったりするきっかけにもなる。地方の交通を文化・教育の面から支えていくという意味で、鉄道ファンの趣味としてだけではなく、後世に伝える存在として模型の可能性は広そうだ。

鳴海 侑 まち探訪家

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なるみ ゆう / Yu Narumi

1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やX(旧・Twitter、https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。

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