日本に「外国人お手伝い」はやってくるか? 外国人家政婦で試される安倍政権の移民政策
[東京 11日 ロイター] - 今年6月、在日米国商工会議所が安倍政権に外国人家政婦の規制緩和を求めた。日本の入管法では、外国人家政婦の雇用主(スポンサー)になれるのは、基本的に大使館員や企業幹部など特別なビザを持つ外国人のみ。この対象を世帯年収700万円以上の日本国民および永住者(訂正)に拡大してほしいというのが商工会議所の要望だったが、これまでのところ目立った進展はみられない。
少子高齢化で国内の労働人口が急激に縮小するなか、経済成長の維持には外国人労働者の活用が不可欠と指摘する専門家は多いものの、外国人家政婦の規制緩和という「小さな」改革でもたついているようでは、近い将来、本格的な移民の受け入れは見込めない。
安倍首相は公の場で外国人家政婦の規制緩和に言及していないが、関係筋によると、3人の閣僚がこの問題を協議した。専門家は、外国人家政婦の規制緩和が進めば日本人女性が職場に復帰しやすくなり、アベノミクスの成長戦略のひとつでもある女性の社会進出にもつながると指摘している。
アベノミクスは、積極的な金融・財政政策が高い評価を受けたが、第3の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」の動きは鈍い。
政府は移民政策として、高度な技術を持つ人材のビザ取得の手続き簡素化や永住許可申請の審査期間短縮などを計画しているが、出生率低下と高齢化への総合対策としては不十分だというのが、専門家の見方だ。
日本人の雇用を奪うとの懸念も
外国人政策研究所の坂中英徳所長(元東京入国管理局長)は、予想される人口の減少を補うには、50年間で移民1000万人を受け入れる必要があるとみている。外国人家政婦の規制緩和は、小さな一歩にすぎないが、雇う側にとっては大きな違いになるという。
しかし、実際の規制緩和は、想像以上に難しく時間がかかるというのが、当局の認識だ。法務省入国管理局の関係者は、外国人を雇用する前に、日本人に同じ仕事ができないか確認する必要があると指摘する。
家政婦だけにとどまらず、本格的な移民の受け入れに乗り出すとなれば、複雑極まりない問題が待ち構えていることは明らかだ。
日本で働く外国人家政婦については、明確な統計がないが、現場で働く労働者からは、取り締まりが厳しくなったとの声が聞かれる。
米国人企業幹部の家政婦として働くフィリピン人女性(69)は「1990年に観光ビザで出稼ぎに来た頃と比べると、かなり厳しくなった」と話す。この女性は、正規の雇用主の下で働いていないことが発覚し、数年前に一度強制送還された。
この女性を雇用する米国人幹部は、日本人を雇いたかったが「フルタイムで育児から洗濯・買い物までこなす人が見つからなかった」という。
安倍政権は、女性の社会進出を託児所の拡充などで支える方針だが、託児所では子供を長時間預けられず、男性優位の職場環境で対等に渡り合うのは難しいとの声は多い。