トヨタ自動車「来期赤字転落」のシナリオ 独自試算! 

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一方で、増益要因もある。鋼材をはじめとする原材料の下落であり、これは「原価改善の努力」に含まれる。車用鋼板の購入価格は今期1トン10万円強だ。来期は3割引き下げて1トン7万円程度まで、鉄鋼メーカーに値下げを要求する公算が高い。トヨタは年間約400万トン購入するとして(1台0.5トンで800万台生産)、トン当たり3万円下がれば、3万円×400万トンで、1200億円の増益要因。 加えて、持ち前のカイゼン活動など本来の原価低減で「毎期3000億円ひねり出せる」(木下光男副社長)とすれば、合計では「4200億円の増益要因」だ。

最後に、「諸経費」は今期と同じ額で「増減ゼロ」と、中立要因とする。これらを積み上げていくと、来期見通しは以下のように試算できる。

来2010年3月期見通しの営業利益増減要因(東洋経済推定)
今期営業利益見通し                    6000億円
 為替変動の影響(1ドル87円、1ユーロ126円)   ▲7600億円
 販売面での影響(774万台、50万台減)       ▲5000億円
 原価改善の努力(原材料安を含む)           +4200億円
 諸経費ほか                          ±0円
来期営業損益見通し                    2400億円赤字

以上はあくまで、今期見通しが達成できるとした前提で、来期業績を見通したものである。

円高について厳しめに見ており、今はまだ手をつけていない、正社員の人員削減なども見込んでいない。その意味では『最悪のシナリオ』とも言えるわけで、現時点は15日発売の「会社四季報」新春号における予想数字も変更していない。ただし環境変化次第では、2月上旬に開催される08年4~12月期発表前でも、今来期について業績予想を見直す可能性がある。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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