近く消滅、「2階建て新幹線」は再登場するか? 海外ではフランスのTGVで圧倒的主力だが…

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

同じような2階建て新幹線電車は東北新幹線の200系にも存在した。これはJR東日本が1990年に導入したもので、2階をグリーン席とし、1階を個室のグリーン席と普通席とした車両と、1階をカフェテリアとした車両の2種をペアとした。6組しか造られず、しかも2005年には引退してしまったから、今では記憶から薄れてしまっている人も少なくないだろう。

1994年に登場したE1系。2階はグリーン席、1階は普通席(1994年3月2日、筆者撮影)
E1系の2階席。通路を挟んで両側ともに3人掛け座席となっている(1994年3月2日、筆者撮影)

それに対してE1系、E4系は、最初に記した通り、新幹線で通勤する乗客をさばくのが目的だったから、ひたすら定員を増やすことに工夫が凝らされた。それが最も顕著に現われているのが、普通車自由席2階の座席配置である。通常の新幹線普通車が通路を挟んで2人と3人の5人掛けであるのに対して、3人と3人の6人掛けなのである。また背もたれは固定式で隣の席とのひじ掛けも省略、さらに通路の幅も極限まで切り詰められた。

2階建てを採用したため、車両の重さは通常の車両よりも増加した。その結果として、性能上の制限から最高速度を上げることもできなかった。しかしそれでも、2階建て新幹線は必要とされたのだった。

新幹線通勤が「2階建て」に貢献

東北・上越新幹線のE1、E4系が登場するに至った理由は“新幹線通勤”だが、では新幹線通勤とはどのようなものなのだろうか。

日本では、企業における通勤手当の一定限度額は非課税対象となっており、現在は月額15万円とされている。

これは東北新幹線ならば東京を起点として新白河以南をカバーする金額である。かつてはもっと限度額が低かったわけだが、それでも"マイホーム"を手に入れようとする多くの人が、その購入資金と通勤費用を天秤にかけ、通勤の費用が多少かかったとしても、それに見合うだけの安くて広い我が家を求める方がよいという結論に達した結果、1980年代から新幹線通勤が増加しはじめた。それをプッシュしたのが、国鉄が"フレックス"という特別企画乗車券―実質的な新幹線定期―を1983年に発売したことである。

また、企業側でも従業員確保の観点から補助を支給する例があり、さらには地方自治体の中には、定住者の増加を願って、都会地への通勤者に対して、期間限定ながらも補助金を支給する制度を設ける例もある。

JR東日本では、2003年に北陸新幹線安中榛名駅周辺で宅地開発を行っている。完全に新幹線通勤を想定した事業といえる。

一方、バブル崩壊にともなう景気減退により、今世紀に入ったころから、企業によっては新幹線通勤補助制度を廃止する例もある。また、地価がピーク時に比べて下落したことや共働き世帯の増加などの理由で居住地を都心近くに求める傾向もあいまって、新幹線通勤のニーズは一時期に比べて少ないようにも見える。

次ページ海外における2階建て高速列車の動向
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事