近く消滅、「2階建て新幹線」は再登場するか? 海外ではフランスのTGVで圧倒的主力だが…

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今や日本をしのぐ高速鉄道大国、中国大陸はどうか。日本の新幹線E2系やドイツのICE3をベースにして展開している高速車両では、いまのところ座席車に2階建ては存在していない。わずかに、2018年2月から上海と北京の間で、寝台列車の寝室を2階建てにした列車が走り始めたにすぎない。

2018年12月に長沙市で開催された2018年中国(湖南)国際軌道交通産業博覧会に中車株洲電力機車会社が開発中の2階建て車両が展示されたという速報が伝わっているが、おそらくはまだモックアップであり、しかも最高時速は160kmということなので、高速列車に準ずる準高速車という位置づけのようである。

札幌延伸は「2階建て」投入のチャンス?

さて、翻って日本。E4系に続く全2階建て新幹線車両は登場するのだろうか。

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E1系は2012年に全編成が引退してしまった。E4系も数年以内の全廃がアナウンスされている。それでも、新幹線通勤の乗客が増加し続けるのならば、技術開発によってより快適で高性能の2階建て車両が登場する可能性はある。

しかし、現在の状況を見渡すと、最大の輸送量を誇る東海道新幹線はリニア新幹線への移行が、ほぼ確実となりつつある。東北新幹線の盛岡以北で最高速度が時速320kmに引き上げられ、北海道新幹線が札幌に達したら、ある程度は航空機からの転移を見込むことができるかもしれない。しかし、航空機との所要時間の差は引き続きネックであり、輸送の大部分が転移して2階建車両12両編成が頻繁に走る……ことは、残念ながらあまり想定できない。

つまり、現実的にはE4系に続く全2階建て新幹線車両の登場の可能性は、近未来の範囲では低そうだ。

前里 孝 シリーズ書籍「レイル」編集主幹

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まえさと たかし / Takashi Maesato

1953年、大阪生まれ。幼いころに三線式Oゲージ鉄道模型を買い与えられて以来、現在までずっと鉄道の趣味にのめりこんでいる。のみならず鉄道に関連する地理、歴史、建築、土木、経済などの分野にも関心が拡がる。仕事面では、長年にわたり株式会社エリエイで鉄道趣味出版物の編集および販売業務に携わってきた。現在は同社顧問。シリーズ書籍「レイル」編集主幹。

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