専門家の株価予想はなぜ当たらないのか 実は投資家も「同じワナ」に陥っている?

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しかし、実はアナリストだけでなく、投資家もまた「アンカリングのわな」に陥っています。なぜなら、専門家と同じ心理状態になってしまっているからです。その証拠に、アナリストの中には少数ではありますが、他の人とはまったく違う予想を出す専門家もいます。ところが、彼らの意見はあまり投資家には受け入られていません。どんなにマーケットが下がってもつねに強気の人や、逆にいくら上昇相場でも弱気発言をする人は必ずいます。しかし、大勢に逆らうようなコメントをする専門家に対して、投資家はあまり評価をしないことが多いのです。

アナリストの本来の存在意義とは何か

さらに難しいのは、株価やマーケットは必ずしも経済のファンダメンタルズどおりには動かないということです。マーケットは往々にして、“感情”で動く面が強いからです。

多くの人が同じ考えを持ち始め、それがしばらく続いていくと、その流れがずっと続くような錯覚に陥ります。ところが、そういうときはえてして逆方向への転換点が近づいているものです。私自身、過去に何度もそういう経験していますが、人はなかなか学べないものです。同じ局面になると同じ過ちを犯してしまっているのです。多くの投資家もこうした経験が少なからずあると思います。

こう考えると、いくら専門家と言われる人たちでも一般投資家と同じ人間ですから、こうした心理的なわなから逃れられないでしょう。でも、彼らは決して予想屋ではありません。経済状態や個別の企業の内容を分析し、投資家が自分で判断するために必要な情報を提供するのが本来の役割です。彼らの予想を最終的に判断するのは、投資家個人です。専門家に株価予想を委ねたくなる気持ちはよくわかります。しかし、専門家に期待したいのは、投資家自身が陥りがちな心理的なわなを彼らの冷静な分析によって防ぐこと、すなわち“感情”から“勘定”へ戻してくれることではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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