それでも日経平均1万6000円を予想する理由 市場は再び「先行き」を楽観し過ぎている

拡大
縮小

ただし議長は「アメリカの経済には全く問題がなく、株価下落は懸念材料だが、それは海外経済に対する不安によるものだ」と語っている。とすれば、やはり足元のような株価の戻りが続けば、市場の海外に対する懸念は薄らいだことになり、元々アメリカの経済に問題がないとしているのだから、利上げを様子見する理由はなくなる。「もうしばらく利上げがない」、と決めつけるのは危険だし、ましてや、株価がどんどん上がっても利上げしないでくれる、などという虫のよい話はありえまい。

日本では、17日に、日本電産が自社の収益予想を下方修正し、今期は減益が見込まれるとした。永守重信会長は記者会見で「11月、12月に尋常でない変化が起きた」と警告を発したが、市場はこの発言をそれほどは悪材料視していない。なかには、「この下方修正は悪材料出尽くしのサインで、今後の株価は明るい」としたような論調も目にするほどで、市場心理が楽観に振れ過ぎている点は、かえって警戒を要すると考える。

以上を踏まえると、日本を含めた主要国の今週の株価動向は、「足元の行き過ぎた楽観」が、目先どの程度さらに行き過ぎるのか、さらにその後、「いつ、どこで息切れするか」だろう。早ければ今週か来週あたりのどこかで、いずれ株価はピークを付けて、再度下落基調に入ると見込む。そうした流れの中で今週の日経平均株価は、2万0500円~2万1200円を予想する。

2019年の日経平均安値「1万6000円」の根拠

さて、当方が主催するセミナーに参加いただいた人や、当方が配信するレポートやメールマガジン類では、今年央の日経平均の下値メドである1万6000円の背景についてすでに解説しているのだが、当コラムの読者には、まだしっかりと触れていなかったようだ。お詫びかたがた述べてみたい。

PBR(株価純資産倍率)は、理論的には1倍を割れないはずだが、実際に過去1倍を割れたことはある。近年のPBR(日経平均の実績PBR、加重平均ベース)の最低値は、2009年(リーマンショック直後)と2012年(旧民主党政権末期)であった。具体的な数値は、2009年3月9日(および10日、12日)は0.81倍、2012年6月4日は0.87倍が、最低値となる。

先週末(1月18日)の日経平均終値は2万0666円、PBRは1.09倍だ。このPBRが2009年並みの0.81倍まで低下すれば、日経平均は2万0666÷1.09×0.81=1万5357円。2012年並みの0.87倍まで低下すれば、日経平均は2万0666÷1.09×0.87=1万6495円となる。おおざっぱにいえば、1万6000円前後だ。ざっくりとした目安でしかないが、歴史に照らせば、十分ありうる数値であり、参考にしていただきたい。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT