家電見本市で「クルマ」がかなり目立ったワケ 自動運転車への取り組みはここまで広がった

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ほとんどの企業が、次世代型の自動運転車をキュービック型で車中には運転席のないものとしてデザインしており、さらにはEV(電気自動車)を前提としていることからも、自動車というよりは、もはや「IoT(モノのインターネット)機器」と言ったほうがいいようなシンプルな構造だ。

テスラがEV車の量産化に苦しんでいるのは、EV車といえども、その他のハードが「従来の自動車」の延長にあるからであり、今回のCESで主流となったような「IoT機器」としての自動車に移行できるなら、その量産化の苦しみからは解放される可能性もある。自動車メーカーに加えて、メガサプライヤーや家電メーカーまでもが自動運転車に取り組んでいるのには根拠があるのだ。

自動運転車は「IoT機器」として確立するか

昨年、筆者は多くの自動車メーカーやメガサプライヤーに対して戦略レクチャーやワークショップを提供したが、トップメーカーであるほど、「自動車は近未来にIoT機器のようなものになり、異業種からの参入が相次ぐ」といった強い危機感を持っていると感じた。そして、この危機感はこの1年間で大きく高まり、各社とも水面下でさまざまな準備を着々と進めている。

もっとも、「IoT機器」としての次世代自動車の競争上のポイントは、もはやテクノロジーではなく、いかに社会実装できるかに移行していることがより明白になってきている。もちろん社会実装のためには実証実験が必要だ。

近未来型の自動運転車は、構造的な人手不足や地方での過疎化といった社会的問題を解決する手段にもなりうるものだ。

一方で、本年のグローバル経済に最も大きな影響を与えるであろう米中新冷戦は、「貿易戦争×安全保障×テクノロジー覇権」をめぐる戦いというのが本質ではないかと観察される。その中でも次世代自動車をめぐる戦いは重要部分を構成。次世代自動車で国内の社会的問題を解決し、分断されつつあるグローバルな国際関係にも貢献できるかが大きなカギを握る。

現時点では、「コンセプトカー段階の日本メーカー」が、強烈な危機感と壮大な使命感で向こう1年間でさらにどのような進化を遂げることができるかが注目される。アメリカや中国との戦いではなく、自社の企業DNAをスタートアップ企業のようにスピーディーなものに変革できるかという社内での戦いを制することが、まずは求められていると言えよう。

本来、自動運転車の究極的な目的は、地域の有力な交通手段となり、提供する側も収益化・量産化を実現することにある。ここにより近い位置にあるのが自動車メーカーではなかったバイドゥであることに目を向ける必要があるだろう。同社がブースにおいて量産化の映像を誇らしげに提示していたのには大きな意味があるのだ。自動運転タクシーよりは、まずは自動運転バス。成果を見せつけられると、バイドゥが極めて戦略的であったと見えるのは筆者だけではあるまい。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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