トヨタの中国市場巻き返しが現実になる日 欧米系や地場メーカーとの熾烈な競争必至
トヨタが中国事業に本腰を入れれば、中国での販売台数は一層伸長するだろう。しかしそこには期待とともに3つの条件が浮かび上がる。
1つ目の条件は、中国のNEVシフトに適応した生産・販売体制の確立だ。中国では「燃費規制およびNEV規制」が実施され、ガソリン車の省エネ化が強く求められると同時に、2019年からは一定の割合でNEV生産が義務づけられる。
トヨタはHVで省エネ化を推進する一方、2020年までに「カローラ」プラグインハイブリット(PHV)や「C-HR」EVを含む10車種の投入でNEV規制をクリアしようとしている。中国政府がPHVを含むエンジン車工場の新設を厳しく規制する中、トヨタは中国政府と交渉し生産能力を拡大させねばならない。
中国で勝ち抜くための3条件
仮にトヨタが2025年に中国販売台数250万台を達成しようとした場合、そのうちEVを2割(50万台)、PHVとHVを4割(100万台)、エンジン車を4割(100万台)とする組み合わせが現実的であると思われる。そしてEVの価格競争力を勘案すれば、基幹部品であるリチウムイオン電池の調達はパナソニック1社だけでは賄いきれず、CATL(リチウムイオン電池中国1位)など中国電池メーカーからの調達も避けられないであろう。
またトヨタが得意とするHVに対し、欧州系メーカーはマイルドHV(電源電圧を48ボルトに引き上げたモーター・電池パックなどの組み合わせ)システムを2020年から中国で大量投入することが見込まれる。そのときトヨタは、一人勝ちする中国HV市場でも激しい競争に巻き込まれることになる。
2つ目はスマートカー開発の加速だ。中国政府は2018年、「スマートカーイノベーション戦略」を発表し、2025年に高度自動運転(レベル4)のスマートカー実用化を目指している。
百度地図(百度)、高徳地図(アリババ)など地場企業14社に大量の路面データを収集する高精度地図のライセンスを供与する一方、安全保障上の懸念を理由に外資系企業の参入を厳しく制限する。百度は2017年自動運転プラットフォーム「アポロ」を公開した。これにより中国政府から自動運転に関するビッグデータの収集・分析を特別に認められ、実用化に向けた動きに拍車をかける。
外資系メーカーにすれば、中国で自動運転の開発を進めるには百度に協力したほうが圧倒的に有利であり、マイクロソフトやホンダ、フォードなど外資系企業約130社が「アポロ」開発への参加を表明した。
現在百度、テンセントが複数の都市で試験的にナンバープレートを取得したほか、独系のBMW、ダイムラー、アウディもこれに続き自動運転市場への早期参入を図る。こうした動きを見れば、トヨタが中国でスマートカーを開発するには、地図データなどの分野で業種をまたいだ連携を模索する必要があるのは自明であろう。
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