「暴言指導」を"必要悪"とする中高部活動の闇

「再発」続くバレーボール界は変わるか

9月には私立正智深谷高校(埼玉県深谷市)女子、12月は松本国際高校(長野県松本市)の男子と私立尾道高校(広島県尾道市)の女子バレー部に顧問の暴力が発覚。すべてのバレー部で過去に前任校などで一度処分を受けた教師が再び繰り返した末に、減俸や退職を余儀なくされている。

この事態を重く見た日本バレーボール協会専務理事の八田茂さん(61)は12月12日、仙台市にある不来方の生徒の自宅を弔問した。筆者も同席し、取材させてもらった。

桜宮高校をはじめ運動部活動を起因とする自殺は過去にも起きているが、当該の競技団体幹部が遺族と面会したのは初めてのこと。

八田さんはサッカーJリーグのキャリアサポートセンター長や日本オリンピック委員会(JOC)のキャリアアカデミー責任者を歴任。昨年8月に協会外部から初めて専務理事に登用された。「当該競技である私たちが知らん顔はできない。まずは遺族の気持ちを考えるのが人間としての筋だ」と面会の理由を述べた。

八田さんは遺影を前に焼香し静かに手を合わせたのち、生徒の父親(51)、母親と代理人を務める草場裕之弁護士を含む3人と面談した。

今年2月に生徒が岩手県代表として出場した春高バレーでのプレー映像を見せてもらった。遺書も読ませてもらった。「顧問のことがあって、息子さんがこういうことになった経緯しか考えられないですね」と声を詰まらせた。

父親が「左利きで字はうまくないんですが、これはしっかり書けているほうだと思います」と声を絞り出すと、母親は「(周囲の)期待に応えようと一生懸命だった」と涙した。

「(高校)2年生まではのびのびやっていた。3年生がいなくなって新チームになってから、息子が顧問のはけ口というか、標的になった。できないことを責められ続けた」

八田さんは何度もうなずきながら聞いた。

開会式で「パワハラ決別宣言」をしてほしい

父親は、1月5日に開幕する全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)開会式での「パワハラ決別宣言」をしてほしい旨を八田さんに申し入れた。

「選手はスポーツマンシップの宣誓をします。指導者もそこで宣言してもらえないか。そうすることで啓蒙は進むのではないか。このままでは、うちの子のように命を落とす子が出てくる」(父親)

協会サイドも暴力とパワーハラスメントの根絶を宣言し、啓蒙策を考えていくというが、八田さんは父親の提案に対し「イベントめいたもので終わらせてしまうのはどうか」と慎重な姿勢を見せた。

「強豪校が集まる大会。正直なことを言うと、まだ再教育が進んでいない中では(暴力や暴言を)必要悪のように考えている人もいるのではないか。高校バレーの指導者は教員がほとんどなので、高体連などと連携するなどして、組織の基幹部分にしっかりアプローチしていくことを考えたい」と説明した。

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