ソフトバンク上場、公開価格割れが示す難局 ファーウェイ問題、値下げ圧力、通信障害…

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そもそもソフトバンクの設備投資額のうち、欧州ベンダーと中国ベンダーに分けた場合の比率は欧州が9割で、中国は1割に過ぎないという。つまり、すべての通信設備に占める中国製の割合はかなり限定的だったということになる。

CTO(最高技術責任者)を務める宮川潤一副社長は、コアネットワークにおける中国製通信設備の交換費用の見通しについて、「数億円の前半レベルだ」と述べた。

仮にコアネットワーク以外の部分まで交換の必要が生じれば、費用が多少は膨らむかもしれない。実際、交換範囲の大きさによっては、中国製の通信設備自体が帳簿上の価値を失い、固定資産除却損失が数百億円発生する可能性はあるという。ただ、これはあくまで会計処理の話で、ソフトバンクにとって新たな金銭的な負担を伴うということではない。

問題はファーウェイだけじゃない

とはいえファーウェイ問題の懸念を除いても、ドコモの携帯通信料金の大幅値下げなどの影響は、これから顕在化してくるとみられる。さらに通信障害対策への投資なども含めて、取り巻く環境が楽観できないことには変わりはない。

上場の祝福ムードは皆無だった(撮影:尾形文繁)

宮内社長は会見中、何度も「われわれは逆境に強い」という言葉を繰り返した。また、「通信会社としてのネットワークのインフラビジネスは着実に伸ばせる。その上に新規事業を追加して、これから大きく成長できる」とも述べ、シェアオフィス「ウィーワーク」の日本事業や、スマホ決済サービス「ペイペイ」などを例に挙げた。

ただこの言葉通りにならなければ、痛い目に遭うのは「配当性向85%、配当利回り5%」に惹かれて株を購入した個人投資家たちだ。いくら配当性向を高くしても、多額の含み損を抱えることになれば本末転倒。公募に応じた多くの個人投資家が求めているのは、耳障りのいい言葉ではない。波乱の上場初日を終えたソフトバンクは今後、市場の評価を覆すことはできるだろうか。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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