巨大組織を破滅に導く「ほんのささいな」忖度

上司に「鼻毛、出てますよ」と言えますか?

権力者はもとより、それによって地位を与えられた者は、慎みを失っていく(撮影:梅谷秀司)
電力網から浄水場、交通システム、通信ネットワーク、医療制度、法律まで、生きていくには私たちの暮らしに重大な影響を及ぼす無数のシステムに頼るしかない。だが時にシステムは期待を裏切ることがある。
カルロス・ゴーン追放劇、東芝の不正会計、福知山線脱線事故から「上司の鼻毛」まで、まったく異なるような出来事であるにもかかわらず、その「失敗の本質」は驚くほどよく似ているという。ノンフィクション愛好家であるurbansea氏が、『巨大システム 失敗の本質』を読み解きながら、その本質に迫る。

「ゴーン」追放劇を招いた組織の空気

結婚式費用の支払いや私的な投資の損失補填をさせたり、はたまた業務実態のない姉に報酬を払わせたり……。日産のカルロス・ゴーン追放劇では、ゴーンが会社を食い物にする実態が次々と報じられていった。

『巨大システム 失敗の本質:「組織の壊滅的失敗」を防ぐたった一つの方法』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

まるで第1報の「ゴーン逮捕へ」を情報解禁の合図とでもしたかのようで、情報操作か何かかと勘繰ってしまうところだが、それはそれとして、権力者や地位のある者が会社に「私」を持ち込むことは、日産やゴーンほどの者でなくとも、平々凡々の会社の平々凡々の会社員のなかにも見られるだろう。

ささいなことでいえば、家族などとの私用の電話を、地位の高い者はオフィス内の座席からするが、地位の低い者はわざわざ廊下に出て行う。デスクに私物を置く置かないも同様だ。

私事に限らず、会社組織にあっては地位が高くなるほど遠慮がなくなり、低くなるほど遠慮がちになる。こうした意識が時に組織の腐敗や壊滅的な事故を招く。先頃刊行された『巨大システム 失敗の本質』(クリス・クリアフィールド、アンドラーシュ・ティルシック)は、さまざまな実例や心理実験などを基にして、その実相を詳らかにしていく。

本書に面白い実験のエピソードがある。面識のない3人にディスカッションを行わせ、そこにクッキーを盛った皿を差し入れる。するとまず全員がクッキーを1枚ずつ取る。では2枚目に最初に手を出すのは誰か。事前に1人に対して、密かにほかの2人を評価するように指名しておくと、評価者というささやかな権力意識を得たその者が2枚目に手を出すのであった。おまけにそういう者に限って、食べ方もひどく汚かったという。

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