ケネディの「亡霊」に取りつかれたオバマ 米国の威厳はかつてなく低下している

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この残念な状況に対して、オバマ大統領、あるいは無謀な共和党陣営を責めるのは簡単だ。が、そうすれば、世界における米国の役割に関する最も重要な点を見逃してしまう。それは、ケネディにあれほどの人気をもたらしたのと同様の理想主義が、米国の国際的な威厳を低下させているということだ。

ケネディの熱烈な信者の中には、彼がもっと長生きしていればベトナム戦争は避けられたと今なお考える人がいる。その証拠はないどころか、ケネディは強硬な冷戦の戦士である。彼の反共産主義は米国の理想主義の観点から表現されている。大統領就任演説では、「自由の存続と成功を確実にするため、われわれはいかなる代償も払い、いかなる重荷も負担し、いかなる困難にも直面し、いかなる友も支援し、いかなる敵にも対抗する」と語っている。

世界で自由のために戦うという米国が掲げた使命に対する熱意は、特に米国においてベトナム戦争の流血によって傷ついた。推定200万人のベトナム人が、結局のところ彼らを解放することのなかったこの戦争で命を落とした。

ブッシュ大統領がアフガニスタンやイラクと戦争を行うことを選んだ理由は複雑だった。が、これらの戦争を推進したネオコンが使った「民主主義の普及」「自由の大義」、そして「アメリカの価値」という言葉は、ケネディ時代と変わらなかった。

08年に米国民がオバマ大統領を選出した理由の一つは、米国の理想主義が再び数百万人の死と難民化につながったからだ。今や米国の政治家が自由について語れば、人々の脳裏には空爆、拷問部屋、そして致死的な無人機の持続的な脅威が浮かぶ。

オバマ政権下の米国の問題は、彼のリーダーシップの矛盾した点に根差している。オバマ大統領は、世界を武力によって解放する米国の使命から距離を置き、イラクにおける戦争を終結させ、まもなくアフガニスタンでの戦争も終わらせる。イランやシリアと戦争する誘惑も退けた。が、これは世界の問題をすべて米国が解決することを期待している人々には弱腰で優柔不断に映る。

同時にオバマ大統領は、グアンタナモのおぞましい米収容所を閉鎖できていない。国内外の監視活動について漏らした者は逮捕され、致死的な無人機の使用も増えている。あからさまな戦争は減っても、秘匿された戦争は激化し、拡大している。そして米国のイメージは日々ますます低下している。

が、主たる問題はオバマ大統領ではない。それは、世界における米国の「特別な」役割に対する間違った信念だ。この信念は不要な戦争を推し進めるのに何度も悪用されてきた。理想主義を掲げて、米国民だけでなく世界のほかの国々も米国に過剰な期待をしてきた。そして、こうした期待は失望で終わるのである。

週刊東洋経済2013年12月7日号

イアン・ブルマ 米バード大学教授、ジャーナリスト

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Ian Buruma

1951年オランダ生まれ。1970~1975年にライデン大学で中国文学を、1975~1977年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

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