マツダとボルボが高評価を総なめにする理由 一度クルマづくりをリセットしたのが大きい

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もっともこれ以外のエンジン戦略については、マツダとボルボでは違いがある。

マツダは高い評価を得ているディーゼルエンジンや、ロサンゼルス・モーターショーで先日発表した新型マツダ3に搭載した「夢のエンジン」スカイアクティブXが象徴するように、エンジンの進化を主眼に置いている。

新型マツダ 3(写真:マツダ)

対するボルボは、2019年にすべての車種を電動化するというアナウンスをいち早く行ったことで話題になった。一部のメディアはこれを勘違いし、すべてを電気自動車にすると誤報したりもしたが、実際はプラグインハイブリッド車(PHV)を含めた電動化車両を設定するというもので、日本仕様ではXC90、V90、XC60、V60に設定を完了している。

逆にディーゼルについては、最近導入されたXC40やV60ではわが国への導入を見送るなど、フォルクスワーゲンの排出ガス不正事件以来、欧州で急速に勢力を減らしている現状を反映しつつある。逆にマツダの電動化は最近の技術説明会で、2030年時点で生産する全車両に電動化技術を搭載すると公表しており、得意のロータリーエンジンを発電に使うレンジエクステンダーEVも用意すると明らかにしている。

攻めのクルマづくりという共通点

このようにパワートレインの方針には違いがあるものの、ボルボとマツダが体制変更に合わせて全車をゼロからつくり直し、理想のデザインやエンジニアリングを積極的に投入するという、攻めのクルマづくりを行ったことは共通している。それが多くのユーザーに支持され、COTYなどの賞を相次いで獲得する結果につながっているのではないだろうか。

メルセデス・ベンツやBMWのように、確固たるブランドイメージを築いており、それを成功に結び付けているブランドは、このような刷新はしにくいだろう。トヨタ自動車やフォルクスワーゲンのような膨大なラインナップを誇るメーカーも、また難しいだろう。ボルボやマツダぐらいの規模だからこそ実現できたのかもしれないが、モノづくり改革の成功例として他業種の参考にもなるのではないかと思っている。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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