“元祖クラウド”グーグルの大勝負、急拡大する法人ビジネス《特集マイクロソフト》

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“元祖クラウド”グーグルの大勝負、急拡大する法人ビジネス《特集マイクロソフト》

「すべてのアプリケーションをインターネット経由で提供する」--。ネットの申し子、グーグルのクラウドコンピューティング戦略は実に単純明快だ。

11月半ば。都内のホテルでスーツ姿のグーグラーたちが、集まった日本のビジネスピープルに、あるサービスの利点を熱心に語りかけた。そのサービスの名前は「グーグルアップス」。メール、スケジュール管理、チャット、表計算、ワープロソフトのセットをネット経由で提供するサービスで、目下グーグルが力を入れる法人向け事業の主力サービスだ。

1年前の2007年7~9月期決算では、エンタープライズ向け事業を中心とする非広告収入は全社売り上げの0・9%にすぎなかった。しかし、その規模は着実に拡大。直近の08年7~9月期では3・4%を占めるようになった。

企業向けのアップスは前述の「スタンダード版」(無料)のほか、広告を外してセキュリティ機能等を充実させた「プレミアム版」(ユーザー1人当たり料金は年間50ドル、07年2月開始)がある。利用企業数は現在100万超。「当初は1日平均1000件程度が利用を始めていたが、現在では1日3000件と利用企業数は加速度的に増えている」と、エンタープライズ部門担当社長のデイブ・ジラールド氏は胸を張る。世界的な景気後退を受けた企業のITコスト削減の動きも、アップスには強力な追い風になっているようだ。

アップスの強みの一つは、従来のシステムに比べ、アプリケーション運用コストを大幅にカットできること。サーバーをお守(も)りする専門スタッフが不要になるうえ、一般個人を対象にしたサービスで培ってきた使い勝手のよさから、従業員に対するトレーニングの手間もかからない。

今のところアップスの利用は中小企業が中心。しかし、最近では米大手バイオ企業ジェネンテックが使い始めるなど、大企業が採用するケースも増えてきた。4月にはCRMサービス大手のセールスフォース・ドットコムと提携しており、今後は同社の顧客網を足掛かりにして利用企業数の拡大を図る。

機能面での拡充も急ピッチで進んでいる。すでに、「ギアーズ」という機能を用いることで、文書作成ソフト等はネットにつながっていない状態でも利用可能になっているが、顧客からの要望が強いのは「Gメール」をオフラインでも使えるようにすることだ。

アップスのライバルは、言うまでもなく圧倒的なシェアを握るマイクロソフト「オフィス」だ。規模で比べれば、背中も見えないくらいだが、「いったんクラウドの便利さに慣れると、レガシーシステムには戻れない。企業内で利用する人がある程度増えると、その後の利用は飛躍的に伸びるはずだ」と、エンタープライズ部門製品企画担当ディレクターのマシュー・グロツバック氏は自信を見せる。

ネット経由で自社のアプリケーションを使えるようにする一方で、08年5月末には、ソフトウエア開発者がグーグルのプラットフォーム上で稼働するウェブアプリケーションを作成できる「アップ・エンジン」の提供も開始。月間の閲覧回数が500万程度までのアプリケーションであれば、500メガバイトのサーバー上の保存容量などを無償で利用できるようにした。グーグルのウェブプラットフォームは他社にない規模、安定性を誇る。今後も徐々にソフト開発者に対してプラットフォームをオープンにしていく方針だ。

クラウド時代への準備を着々と進めるグーグルだが、そこへ予想どおりとはいえ、やってきたのがマイクロソフトだ。

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