アメリカ医薬企業が発揮する圧倒的な存在感 武田・シャイアーはどこまでくい込めるか

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そのアボットから分離・独立したバイオ医薬企業がアッヴィ(ABBV)。

免疫疾患、腫瘍、ウイルス感染、神経系疾患を重点領域としており、主柱の抗リウマチ治療薬「ヒュミラ」で売上高の6割を稼ぎ出している。2015年にがん治療薬のバイオベンチャーであるファーマサイクリックを買収、獲得した血液がん治療薬「イムブルビカ」の収益貢献が期待されている。

バイオ医薬企業は特定分野に特化した開発を行う企業も多い。ここではアレクション・ファーマシューティカルズ(ALXN)とバーテックス・ファーマシューティカルズ(VRTX)を取り上げよう。

アレクションは超希少疾患の治療薬の開発を行っている。同社のホームページによると、超希少疾患とは患者数が5万人に1人未満の病気のことで、その多くは「重篤、慢性かつ進行性で死亡率も高い」のだという。

このうち、発作性夜間ヘモグロビン尿症や非典型溶血性尿毒症症候群などに対する唯一の承認薬である補体阻害剤「ソリリス」を開発・販売している。また低ホスファターゼ症治療薬「ストレンジック」とライソゾーム酸性リパーゼ欠損症治療薬「カヌマ」も急成長中だ。

バーテックスは嚢胞性線維症の領域に特化したバイオ医薬企業で、治療薬「オルカンビ」「カリィデコ」が2本柱として牽引している。

加えて、2018年2月に承認された新薬「SYMDEKO」が順調に立ち上がり、第3の柱に成長してきた。

専門領域持ち、強さを発揮する医療機器企業

アメリカ企業は、医薬品だけではなく医療機器の分野でも世界を先導している。最大手のメドトロニック(MDT)は心疾患や消化器系、脊椎疾患、糖尿病などの領域で医療機器や手術支援システムを展開しており、心臓ペースメーカーでは世界トップに位置している。

医療機器企業もM&Aとは無縁ではなく、2015年に手術用製品や人工呼吸器に強みのあったアイルランドのコヴィディエンを、翌2016年には補助人工心臓メーカーのハートウェアを買収している。ちなみに同社はコヴィディエン買収時に本社をアイルランドに移転させたが、オペレーション上の本社はミネアポリスとしているため、本稿ではアメリカ企業として取り上げた。

売り上げ規模で続くのがベクトン・ディッキンソン(BDX)。世界50カ国以上に拠点を持つグローバル企業で、注射器や注射針、カテーテルなど医療機器の管理・デリバリーを軸に、組織培養などの分析・診断システムも手がけている。2017年12月に同業のC.R.バードを買収したことで泌尿器分野や手術用品分野が加わり、業務領域が拡大した。

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