富谷市の生協「一般家庭に水素を宅配」の理由 配送車で「水素吸蔵合金カセット」を運ぶ

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富谷市の水素サプライチェーン実証プロジェクトで使われる水素バッファータンク(写真:富谷市)
太陽光発電で作った水素をカセットに詰めて一般家庭や児童施設に配達するユニークな地産地消型の水素サプライチェーンの実証プロジェクトが、宮城県富谷市で始まった。
プロジェクトの概要とその意義について、『日本の国家戦略「水素エネルギー」で飛躍するビジネス』の著者・西脇文男氏がリポートする。

水素を生協の配送車で一般家庭に配達

宮城県のほぼ中央に位置する富谷市は、仙台市のベッドタウンとして発展を続ける、人口5万人余の地方都市だ。ここで、既存の物流網と純水素燃料電池を活用したユニークな地産地消型の水素サプライチェーンの実証プロジェクトが始まっている。

富谷市が日立製作所、丸紅、みやぎ生活協同組合と共同で、環境省の「地域連携・低炭素水素技術実証事業」として、今年8月から運用を開始したものだ。

まず、みやぎ生協の物流センター屋上に設置された太陽光発電の電力を使って、水電解装置で水素を取り出す。取り出した水素はいったんバッファータンクに貯蔵され、そこから水素吸蔵合金カセットに充填される。カセットはみやぎ生協の配送車で他の配達品とともに、利用者(組合員の一般家庭3軒、みやぎ生協店舗および市立小学校児童クラブ棟)に配送され、利用者は、カセットを純水素燃料電池に取り付け、水素を取り出して電気や熱に変えてエネルギーとして利用する。

このプロジェクトのポイントは、水素吸蔵合金カセットと生協の配送車を活用して水素を輸送するところにある。

水素の輸送手段としては、高圧で圧縮して運ぶのが最も一般的だ。この方法だと、大量の水素を効率的に運べるが、取り扱いには高圧ガス保安法に基づく資格や免許が必要となる。

水素吸蔵合金は、水素を取り込む性質を持つ金属をベースに、水素の取り入れ・放出を可逆的にできるように工夫した合金だ。水素吸蔵合金に取り込まれた水素は常温常圧下で安定しており、漏れ出す心配はない。高圧ガスの輸送に比べ安全性が高く、資格や免許も必要ない。難点は合金の重量が重いこと。貯蔵には適しているが、輸送には不向きだ。

次ページこのプロジェクトでは水素を小分けにした
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