ドワンゴはニコニコ動画の「公式化」に着手、念願の単月黒字化は実現するか?
ドワンゴは、12月中旬までに、コメント機能付き動画投稿共有サイト「ニコニコ動画」の大幅なバージョンアップに踏み切る。従来の特定ファン層だけではなく、より一般の顧客を誘致して広告媒体価値を高めるべく、サイト内にトップページ的な「ニコニコチャンネル」という公式サイトを開設する。また、ユーザー同士のチャット機能を強化した同期的なコミュニケーション空間「ニコニコ広場」を開設したり、ユーザーによる生放送や広告を可能にする機能の追加も予定している。
ニコ動は、12月3日時点で登録会員数1029万人と、会員数が右肩上がりで増えており、「国内のWebベースでは最短で1000万人を突破した」(小林宏社長)サイトとなった。ただ、ほとんどの会員が無料登録で、プレミアム(有料)会員(クレジットカード決済で月額525円課金)は現在22万人前後と伸び悩みぎみだ。バナー広告などの広告収入を加えても、前08年9月期の売り上げは18億円で、会員増に伴うサーバー償却費や回線費用などの負担が収入を上回り、15億円超の部門営業赤字だった。
ドワンゴでは、今2009年9月期中に、過去2年にわたって巨額の赤字を垂れ流してきたニコ動を少なくとも単月で黒字化させることを社長自身、目標として公約している。通期で赤字をなくすことは無理でも、「売上高48億円、登録会員数1420万人、うちプレミアム会員数36万人」の実現を目指すという。
そのための推進役として期待がかかるのが、元NTTドコモ「iモード」の仕掛け人で、11月末から取締役”エヴァンジェリスト”に就任した夏野剛氏の手腕だ。「日本最大かつシンボリックなメディアとして、ニコ動のポテンシャルは大きい。ただ、(広告枠の少なさなど)これまではこの状態でよくやってこれたな、と思う点は多い」と同氏は語っており、夏野流のニコ動改革の第一歩が今回のバージョンアップだ、という見方もできるだろう。
今回のバージョンアップの目玉は、12月5日から順次サービス開始される「公式サイト化」を意識した「ニコニコチャンネル」だ。従来もニコニコ動画のなかに、コンテンツホルダーなどのパートナー企業が動画を提供するコーナーがあった。そうした公式動画をチャンネルとして編成したうえで一覧性を持たせ、「初めてニコ動を見る人でも、iモードのトップ画面のようにどこに何があるのかが一目でわかるようにする」(夏野氏)という。いわば「動画コンテンツのポータル化」を狙ったものだ。
この公式チャンネルの立ち上げに際しては、121社が参加企業としてすでに名乗りを上げている。地上波テレビ局系のTBS、フジテレビをはじめ、アニメ系のイオシス、手塚プロダクション、GDH、音楽系のポニーキャニオン、エイベックス、ゲーム系のセガ、タイトー、コーエーなど。自民党、民主党、日本共産党といった政党や政治家系のチャンネルや、東芝、タニタといった一般企業のチャンネルもある。各チャンネル運営者は、それぞれのチャンネルへのアクセスをコントロールする権利を持ち、動画の投稿やコメントの可否などを設定できる。また、コンテンツを有料にするか無料にするかも、運営側に委ねられているという。
無料サービスに慣れた従来のニコ動ファンをつなぎとめつつ、新たな一般ユーザー層の開拓ができるかどうかが注目されるところだ。
なお、ドワンゴの今期業績については、主力の携帯コンテンツ、ゲームなどは微増、ニコ動の赤字が縮小するというのが会社の期初計画の前提だ。「東洋経済オンライン」も現時点では会社計画を支持、バージョンアップの効果などをみながら、予想数字を精査していきたい。
(勝木 奈美子)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
連本2008.09 24,978 115 107 -2,298
連本2009.09予 28,900 420 410 280
連本2010.09予 30,000 600 600 400
連中2008.03 12,463 32 60 -493
連中2009.03予 13,800 -50 -70 -150
-----------------------------------------------------------
1株益¥ 1株配¥
連本2008.09 -11628 2000
連本2009.09予 1415 2000
連本2010.09予 2022 2000
連中2008.03 -2498 0
連中2009.03予 -758.1 0
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