トランプ大統領がパパブッシュから得た教訓

1期4年で終わった故ブッシュ大統領の「矜持」

実はこのような相場模様を遠い昔に一度味わった記憶がある。それは先日94歳で亡くなったジョージH・W・ブッシュ氏が大統領だった頃だ(人気1989 ~1993)。その頃、日本の日経225の市場では、今のアメリカ株のような相場が始まっていた。だが市場関係者が下げの本質に気づくことはなく、当時としては新手の裁定取引の解説ができるようになったのは下げが始まって1年後だった。

当時、筆者が証券の営業で帰宅した後欠かさず見ていた経済番組では、市場関係者が「ここがボトム」だと繰り返していた。その時、その番組のキャスターだったのが、小池百合子東京都知事だった。今、アメリカのCNBCでは同じような光景が繰り返されている。弱気を言う人は遠ざけられ、強気を言う人だけが重宝されている。そんな中、5日はその時代に大統領だったジョージH.Wブッシュ氏(第41代)の棺が映し出されていた。

彼は親しみをこめて「パパブッシュ」と呼ばれた。話題の米中貿易協議の陰に隠れたせいか、日本ではパパブッシュの死はさほど大きくは取り上げられなかったようだ。まあ、大統領としては不名誉な1期で終わったこと。そして何より「冷戦時代」を知る人が減ってきた証拠だろう。だがアメリカでは哀悼の意を示すため、NY株式市場は休場を決めた。地味なイメージとは裏腹に、パパブッシュは、時代への転換点で重要な役割を果たした人だ。よって個人的にも哀悼の意味を込め、少し解説しておきたい。

パパブッシュは財政赤字を放任せず増税に踏み切った

まずパパブッシュで思い浮かぶのは、湾岸戦争を主導したことだ(第1次イラク戦争)。またその前の冷戦終結時の大統領だったことも記憶に新しい。さらに共和党の大統領でありながら、アメリカの人権史極めて重要な「障害を持つアメリカ人法」(1990年)を制定したことも特筆すべきことだろう。

そして、個人的に最も注目したのは、彼が副大統領だったレーガン政権時に急拡大した財政赤字を放任せず、大統領選での公約を破り(彼は予備選で絶対に増税しないと公言)、民主党が支配した議会と妥協して増税に踏み切ったことだ。これは健康保険問題でも、オバマケア廃止を掲げながら、実際は有権者の前に腰砕けになった今の軟弱共和党では考えられない矜持だ。さすがブッシュ家の先祖はメイフラワー号の乗船記録に名前が残る名門である。

だが結果的にこのグレートジェネレーションの矜持は災いとなった。再選を試みた1992年の大統領選では、ブッシュ氏の増税を批判し、第3の選択肢として立候補したビジネスマンのロス・ペロー氏に共和党の票を奪われた。その結果、若いビル・クリントン氏にまさかの敗北を喫した。

意外だったのは今回のドナルド・トランプ大統領の反応だ。トランプ大統領は、大統領選後ブッシュ家と犬猿の仲になったにもかかわらず、パパブッシュの死には厳粛に哀悼の意を示した。

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