テレビ局は危機対応が遅い「茹でガエル」だ スカイマーク佐山会長「まだ危機感がない」

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ところが局によってバラバラで、しかも一部の番組しか見られないなら、誰も後で見られることを認知しません。だから「全部」見られるというのが大事ですね。共通のプラットフォームをなぜすぐやらないのでしょうか。どう考えてもデメリットはないし、やらなければ競争力が落ちるだけなので、「Why not?」ですね。

会社経営もそうですが、一般に人は本当にダメにならないと真剣になれません。外からは相当大変に見えるのに、変えようとしません。ところが資金繰りが苦しくて今月末に資金がないとなると、これは大変だと一生懸命になります。テレビの現状はそれとまったく同じで、外から見ていると切羽詰まった状況なのに、中にいる人は「茹でガエル」状態だと思います。遅かれ早かれ、やらなければいけないのは間違いない話ですから、それすらやらないというのは、まだ切羽詰まっていない、危機感がないのではないかと思います。

あえて言えば、倒産前の企業と同じです。倒産前の企業に行くと、皆さん資金繰りで走り回っていると思われるでしょう? 違うんです。倒産直前の企業の共通点は、社内の雰囲気はのんびりゆったりしているんです。上層部だけが資金繰りに走り回っていて、突然会社更生法適用とかになる。それに似ています。

新規参入に賛成、人材をオープンに求めるべき

佐山展生(さやま のぶお)/1953年生まれ。洛星高校卒、京都大学工学部高分子化学科卒。ニューヨーク大学MBA取得、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。帝人では研究開発に従事、三井銀行(現・三井住友銀行)でM&Aアドバイザリー業務担当。1998年ユニゾン・キャピタル共同設立・代表取締役パートナー。2004年GCA共同設立・代表取締役。08年からインテグラル代表取締役。日本のM&Aにおけるランドマーク案件多数を手がけてきた。2015年9月からスカイマーク代表取締役会長。2018年4月一橋大学大学院経営管理研究科客員教授(写真:cakes)

現・官房長官が「携帯電話事業は寡占なので問題だ」と言っていましたが、テレビもまさしく寡占の業界です。寡占の何が悪いかというと、新規参入がなく競争がないことです。もし電波を2~3社に開放したらすごく活性化し、放送のレベルやベースが上がるでしょうから、私は新規参入には賛成です。ただし、これには危機感があるかどうかが重要です。ここを強化しなきゃ存続も危ういと思ってやるのと、今までどおりやればいいと思ってやるのとでは、全然違います。ビジネスは一生懸命になった集団が勝ちます。今の技術やネットワークを持つテレビ局が、本当の危機感を持って真剣にやったら、今なら新規参入者にも負けないと思います。

放送局に限らず、大企業で経営者や役員になっている人たちは、新入社員のときから社長というゴールを目指して頑張って達成してきた人です。そのゴールにいる人たちが、たとえば経営陣の半分を外から入れるなどといった意思決定は、よほど切羽詰まらないとしません。

かつてJALが会社更生法を適用され、稲盛和夫さんが再建に入ったように、あそこまで追い詰められないと、なかなか大きく変わりません。社長はゴールでなくスタートだと思うような人でなければダメです。会社の中の人が切羽詰まったと感じるのは、外の人が感じるよりタイムラグがあります。ですから、かなり先にならないと経営レベルでの外部人材の導入は、私はないと思います。やるべきですが、たぶん無理でしょう。

フジテレビやTBSの買収騒動のときに決まった規制(=1人の株主が持てる議決権を3分の1以下とする資本規制)ですが、テレビ局の危機感が欠如し茹でガエルになっている要因の1つは、この規制にあります。今のまま行けると思うときに、人は変わろうとは思いません。日常の延長線上には飛躍はありません。その安心感の1つを取り除くだけでも効果があると思います。日本でもし買収する可能性があるとしたら、たとえば楽天やソフトバンクなどでしょうが、ではそれにどんな問題があるのかと考えると、それほど問題はないと思います。むしろ株主が変わったほうがいいんじゃないかという気もします。私は規制緩和するメリットのほうがデメリットより圧倒的に大きいと思います。

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