テレビ局は危機対応が遅い「茹でガエル」だ スカイマーク佐山会長「まだ危機感がない」
私はM&Aをやっていたとき、多くの経営者と会い、経営を考える機会が山ほどありましたが、およそ3年前にスカイマークに投資して初めて実際の事業会社の経営にどっぷり浸かりました。この3年間の学びは、その前の30年よりはるかに大きいものでした。
スカイマークの会長就任以来、毎週何を考え、何をしているかを携帯電話で見られるように全社員に伝えています。その中でずっと言ってきたのは、「定時運航率、日本一」です。2010年度、2011年度は全航空会社中最下位でした。投資したときにいろいろな人にスカイマークの印象を聞いたら、「遅れる」「欠航する」と言われました。1回遅れたらもうその人は乗りません。そこで安全はいちばん大事ですが、次の目標を「時間」にしました。ただし単に「定時運航率が良くなりました」では絶対お客さまは戻ってこない、だから毎週「日本一になろう」と皆さんに言い続けました。そうしたら日本一になったんです。2017年度に12社中ダントツの一番でした。
売り上げや利益を会社の目標にしたら、社員は何をしていいかわかりません。しかし定時運航率は、11カ所の各空港支店の数字が毎日出るので、身近なところでやるべきことが見つかります。定時運航率は航空会社の総合力なんです。どこかの部署だけが頑張っても日本一にはなりません。日本一になれたのは、社員の能力や経験が他社より優れていたからではなく、気持ちなんです。みんなの気持ちが他社のどこよりもそこに向かったということなんです。私はそれを学びました。そして定時運航率日本一の結果として、売り上げも利益も上がるんです。
テレビ局の経営トップも新年の年頭あいさつをしますよね。さて、それ以降はどうされていますか。私は2000人以上の社員に写真付きで毎週伝えてきましたが、そこまでトップがやっている会社がどれだけあるでしょうか。社長が何を考え、何をやっているか、社員は知っていますか。テレビ局はどうでしょうか。
会社は9割以上、トップで決まります。とんでもない人がトップになったら、優秀な人は飛ばされたり、バカバカしくなって抜けていくので、会社の「とんでもない度」が濃縮されていきます。とんでもない社長さんに会いに行くと、まず例外なく一緒に出てくるナンバー2や3もとんでもない人です。逆にいうと、すばらしいトップなら、すばらしい人が自然に集まってきます。ほとんどの会社では、社長が自分の周りをイエスマンで固めて、次の社長を指名するでしょう。そんな社長は、大改革をするような人を絶対に指名しません。自分が院政を敷けるような人を指名します。だから残念ながら、構造上そんな会社は変わるはずがないのです。
もし私がテレビ局の経営者になったら…
もしテレビ局が変わることができるとしたら、残念ながら手遅れになったタイミングでしょう。CM収入がどんどん下がって、そこで初めて経営者は気づくのでしょうが、まずは「もう手遅れなんじゃないか」と感じられるかどうか、そして次は、動けるかどうか。手遅れを感じられる会社か、感じたら手を打てる会社かどうかで二極化します。次の手を打てないところは消えていくだけです。正しい危機感を持つきっかけは、経営危機です。そこまで行かないとたぶんダメでしょう。会社を変えるには社長など経営トップが変わらなければダメです。
逆にいうと、経営陣がガラッと変わると勝てる可能性がありますよ。皆、競争相手が適当に流して走っている人たちばかりですから、ダッシュすれば勝てます。地力があれば一所懸命に経営すれば勝てるんですよ。だから今、テレビ局の経営をやったら面白いと思いますよ。私にはやらせてくれないでしょうが(笑)。(談)
(※本記事はGALAC1月号からの転載です)
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