「万引き家族」のアカデミー賞がありえるワケ ライバルは「ROMA」に村上春樹原作の韓国映画

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しかし、この2つなら、おそらく『万引き家族』のほうが優勢だろう。もともとアカデミー賞は意義のある映画を好むが、トランプが大統領になってからというもの、ハリウッドはさらに政治的、社会的メッセージに敏感になっている。

たとえば昨年の外国語映画賞の受賞作は、トランスジェンダーの主人公を自らもトランスジェンダーである女優が演じた『ナチュラルウーマン』だったし、トランプが就任し、入国規制の大統領命令を出したところだった一昨年は、渡航規制の対象国イランの『セールスマン』だった。『万引き家族』が語るのは、貧困、家族という、アメリカ人にとっても身近な問題だ。

だが『ROMA』も、トランプ政権が移民規制を強めるメキシコが舞台な上、主人公はネイティブのメイドという日陰的存在の人で、さらにキュアロンというブランド力まである。そして配給するのは、お金に糸目をつけないNetflix。『万引き家族』が乗り越えるべきは、やはりこの作品だろう。

結果がわかるのは2月23日

次のアカデミー賞は、来年2月23日に発表される予定だ。そこまでの2カ月半、関係者はキャンペーンに大忙しとなる。アカデミー賞が欲しい最大の理由は、もちろん、それが映画の宣伝になり、興行成績につながること。すでに劇場公開が終わっていたとしても、ブルーレイなどホームエンターテインメントでの売り上げ増が見込める。俳優や監督、脚本家など個人は、これで実力が証明され、優れたプロジェクトへの道がさらに開ける。

アメリカ人は基本的に字幕が嫌いなので、外国語映画部門賞を取ったからといって、急に大ヒットになることはほとんどない。だが、ハリウッドの関係者たちが自分の作品を見て評価してくれたということは、外国人のフィルムメーカーにとって非常に大きなステップとなりうるのだ。

たとえば、2005年に南アフリカ映画『ツォツィ』で受賞したギャヴィン・フッドは、そのすぐ後にスーパーヒーロー映画『ウルヴァリン/SAMURAI』の監督に抜擢された。2010年に『未来を生きる君たちへ』で受賞したデンマーク人監督スサンネ・ビアは、その前にノミネートされた『アフターウェディング』の後にもすでにハル・ベリー主演で『悲しみが乾くまで』を撮っていたが、今やHBOのドラマ「ナイト・マネジャー」のヒットで、ハリウッドで最も活躍する女流監督のひとりとなった。

とはいえ、ハリウッドに出ることがこの人たちの目的と言ってしまうのは、違う。お声がかかって外国からハリウッドに行ったはいいがひどい目に遭ったという話は昔からあるし、いろんな人からとやかく言われることなく、自分の好きなように作品を作りたいアーティスト気質の人のほうが、むしろ多いかもしれない。

それでも、「Academy Award©️Winner(アカデミー賞受賞者)」の肩書が嫌な人は、おそらくいないのではないか。この肩書はずっとついて回る。外国語映画部門でも、一度取ったら、次回作の宣伝時には必ず「Academy Award©️Winner」の言葉が広告やポスターに入るのである。何より全世界が見守る中、アカデミー賞授賞式の舞台に立ってあのオスカー像を受け取った瞬間は、本人にとって人生最大の思い出となるはずだ。

はたして是枝監督もその栄誉にあずかれるのか? 期待したいところである。

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