なんとも用意周到だ。人生は計画通りにはいかない。歳を重ねれば、誰もがそれを知るのだが、そこは20代ゆえの若さとまっすぐさなのだろうか。
そんなことを思っていたら、「実は、これって失恋の反動なんです」と、意外な答えが返ってきた。
優等生の自分が嫌いだった
20歳、大学2年生のときの恋だったという。
よくよく話を聞いてみると、「1日も早く結婚したい」という気持ちの裏側には、“過去の失恋を払拭したい”という思いが感じられた。
「なぜそこまで好きになってしまったの?」と聞くと、「初めて自己開示をした相手だったからだと思うんです」と瑞穂は答え、これまでの生い立ちを話し出した。
「私は、学生時代ずっと優等生でした。それがすごくつらかったんです」
地方出身の瑞穂は、地元では名高い中高一貫の私立女子校に通っていた。成績もよく、クラスの中でも活発で明るくて、友達も多いタイプ。
「本当は優等生の自分が大嫌いでした。でも、地を出して孤立するのも面倒だったし、ニコニコして仲のいいふりをしていれば、学校では友達ともうまくやり過ごせた。疲れるなと思ったけど、うわべだけの友達付き合いを続けていました」
瑞穂の優等生気質は、母の教育によるものだ。
「母がものすごく教育熱心で、3つ上の姉と一緒に、習い事や塾通いをさせられました。母のキャラが強烈だったので、父は母のやることに口出しはしない。黙々と仕事だけをするタイプでした」
そんな家庭環境の中で、瑞穂はいつもどこか気を張って生活をしていた。
「だから、自分の部屋に1歩入ると、イライラを抑えきれなくなっていました。髪の毛を強く引っ張って抜いてしまったり。その行動が精神的ストレスからきているというのは、大人になってから知りました。あと、いつも胃が痛くて、逆流性食道炎がクセみたいになっていたので、お小遣いで胃酸薬を買って、それを学生カバンの中に入れて持ち歩いていました」
それでも優等生の仮面は外すことはなく、高校を卒業した。そして、都内の有名女子大へと進学した。
ずっと女子校育ち。大学も女子大だったので、その環境を変えようと、大学2年のときにインターカレッジサークルで、ある大学の男子バスケ部のマネジャーをすることになった。そこで3つ上の医大生、日村義輝(23歳、仮名)に恋をした。
「2人だけでお茶したり、出掛けたりするのが楽しかった」
2人でいろいろなことを語り合った。日村は、「医者になったら、仕事に集中したい。そのためにも早いうちに結婚をして、子どもを授かりたい」「女性は、家庭を守ってくれる人がいい」と、時に自身の結婚観を語った。そんな彼の言葉に、瑞穂は未来の自分を重ねた。
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