トラフグ養殖業者に差し込んだ光明

11月29日を「いいフグの日」にしたワケ

トラフグは脂肪分がわずか1%で、マグロなどのような脂質によるおいしさの訴求はできない。味を左右するのはコンブのような「うまみ成分」、「弾力性」、「雑味や臭いのなさ」の3つ。噛めば噛むほど味が出ることが、高品質のトラフグの条件だ。

有路准教授が「この10年間で養殖トラフグの品質が上がった」という最大の理由は、味を大きく左右する餌が変わったこと。

これまではイカナゴなどの生餌が中心で、栄養状態を一定に保つのが難しかった。だが近年、トラフグが最適な栄養状態を保てるように設計されたペレットが開発され、数種類を組み合わせることでトラフグの「味」が安定的に向上した。ほかにも、従来よりも病気になりにくい稚魚が養殖に使えるようになったり、害虫駆除薬の効果が高まったという変化も大きい。

 養殖業者に朗報が舞い込んだ

養殖技術の進歩で、10年前にはよくて7割程度だった養殖トラフグの”歩留まり”は、8~9割に上昇した。「ペレット状の餌の価格は高いが、魚を死なせない技術が確立され、全体としてコストの圧縮につながっている」(有路准教授)。トラフグは万単位のお金を払って食べる「高嶺の花」というイメージが強かったが、現在では、数千円で食べられる外食店も増えてきた。

大阪に比べると、関東でフグのなじみは薄い?

進化したトラフグの認知度を上げ、消費量を拡大することが養殖業者の悲願だ。フグ養殖は約半分が長崎県で、次に熊本県、愛知県が続く。一方、フグ消費の半分以上は大阪府といわれ、関東でフグを食べる文化が根付いているとは言い難い。ポテンシャルはあるが未開のエリアだった。

ところが昨年、養殖業者に思わぬ朗報が舞い込んだ。これまで東京都では、生産地の指定工場であらかじめ有毒部位を除いた「身欠きフグ」の流通を禁止していたが、12年10月から解禁されることが決まったのだ。

通常、フグは「ふぐ調理師免許」を取得した者でなければ調理できないが、身欠きフグであれば、保健所に登録するなどして一定の条件を満たすと、専門の免許がなくても扱える。東京都は、関係者の間でフグの流通量拡大が見込める”最後の砦”とされていただけに、解禁の知らせは養殖業者を大いに喜ばせた。

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