企業主導型保育所に巣食う「助成金詐欺」の闇 政府肝いりの保育園増加策には大穴があった

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そもそもA社のような企業は、なぜ台頭したのだろうか。

近年、保育園に希望しながら入園できない「待機児童」が問題として注目を浴び、子育て世代を中心にその解決が盛んに叫ばれた。こうした世論を受け、待機児童問題の解決に向けて安倍政権下で議論され、政府肝いりの政策として推し進められたのが、民間主体(株式会社、学校法人、NPO法人など)が保育園を経営する「企業主導型保育事業」だった。

企業主導型保育事業は2016年4月、負担企業の従業員や地域の子どもを預かるための保育園の整備費、運営費を助成する制度として始まった。協会が管理を一手に引き受け、企業が負担している「子ども・子育て拠出金」を原資に、保育園に助成している。

子ども・子育て拠出金は児童手当の財源でもあるように、企業が社会全体の子育てを支えるために拠出している。法律の定めによって、国が徴収し、子ども・子育てという公益のために支出するという点では、社会保険料や税と基本は同じである。

急増する施設に対し、児童育成協会の審査体制は追いついていない。

企業主導型保育所は、認可保育園よりも緩い基準で認可並みの助成が受けられるとして、参入企業が相次いでいる。助成決定はこれまでに24回実施され、制度開始当初の2016年9月時点(助成決定1回目)で150施設・定員3907人だったものが、2018月3月末時点(同24回目)では2597施設・定員5万9703人まで急増している。

助成が決まった数の推移を見ると、いかに急増しているかがわかる。助成決定1回目の2016年9月時点で150施設、同18回目の2017年3月末時点で871と、半年余りで721施設が増加。その7カ月後、同19回目の2017年10月末時点で1511まで伸び、たった1年ほどで施設数は10倍、定員は9倍にも膨らんでいる。

同年10月の衆議院議員選挙で、安倍首相が総裁を務める政権与党・自民党が幼児教育の無償化政策を訴えたことも、企業が参入する呼び水になったとみられる。前出の児童育成協会関係者が明かす。

「2017年10月当時、急に審査担当の人員が増やされた。待機児童の受け皿を少しでも多くつくることが優先されているように感じた」

制度開始から2年半あまり。悪質な業者の参入と助成金の取り逃げを許さないためにも、企業主導型保育事業の制度を徹底的に見直すべきときが来ているのではないだろうか。

企業主導型保育事業によって整備された保育園について情報をお持ちの方は、 kigyo-hoiku@toyokeizai.co.jp 宛にお寄せください。東洋経済では本問題を引き続き取材していきます。
大川 えみる 保育ライター
おおかわ えみる / Emiru Okawa

西日本の民間認可保育園の元園長。保育士・幼稚園教諭を養成する短大・大学の講師を歴任。園長と教員の経験をもとに、保育現場から社会の動向を読み解く。「保育士給与増額署名」呼びかけ人。日本保育学会、日本乳幼児教育学会会員。各地で就職セミナー、保育者研修なども行う。著書に『ブラック化する保育』(かもがわ出版)、教材DVDに『事例で学ぶ!保育トラブル111分完全密着解決マニュアル』『保育のブラック化をこえて』(ともに医療情報研究所)などがある。公式ブログ「大川えみるの保育日誌」

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加藤 弥 編集者、ライター

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かとう わたる / Wataru Kato

1982年生まれ。HMV渋谷→読売新聞→日テレNEWS24→チケットぴあ→朝日新聞出版→教育新聞→東洋経済オンライン編集部。影響を受けた作家は、アガサ・クリスティー、スーザン・ソンタグ、メアリー・マッカーシー、須賀敦子、米原万里。一番思い出深い取材は、宇宙飛行士・向井千秋さんへのインタビュー。

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