底なしのメニュー偽装、問題の本質は何か 一連の表示偽装から浮き彫りとなった3パターン

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産地を表示しない?

三つ目のパターンである産地偽装も、一義的にはレストラン業者が偽りの表示を改めれば済む話だ。また、メニューの信頼回復を図るならば、卸業者まかせにするのではなく、顧客に料理を出すレストラン自身が責任を持って、産地確認の体制を整備すべきだろう。

だが、現実の対応はむしろ逆になる可能性もある。「悪天候などによってメニューに表示している産地で収穫できなかった場合、近隣で収穫されたものを使うことがある。最近の流れだと表示偽装とされてしまうので、工夫する。それが今回の教訓だ」(外食首脳)という。

仮に「工夫」によって食材の産地表示をなくしたり、あいまいにしたりすれば、トレーサビリティ(産地などの追跡可能性)の流れに逆行する。明らかに、おかしな「教訓」だ。

2003年、米国でのBSE(牛海綿状脳症)問題に端を発して、日本でも食の安心・安全が一段と叫ばれるようになった。それからちょうど10年。誤表示対策として表示内容が後退すると、せっかく整備されたトレーサビリティのチェック体制が形骸化してしまいかねない。

今回、消費者庁の主導するガイドラインが、サプライチェーン全体を対象とし、逃げ道のないルールを作れるかどうか。同庁は「消費者や同業他社からの情報提供が頼りだが、ガイドライン策定後に違反が見つかったら厳罰に処す」としている。

失った消費者の信頼を取り戻すには、メニュー表示のルール作り、これまでの慣行の見直し、チェック体制の整備など、行政だけでなく業界全体を巻き込んだ抜本的な見直しが不可欠だ。

週刊東洋経済2013年11月30日号

山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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