底なしのメニュー偽装、問題の本質は何か 一連の表示偽装から浮き彫りとなった3パターン
産地を表示しない?
三つ目のパターンである産地偽装も、一義的にはレストラン業者が偽りの表示を改めれば済む話だ。また、メニューの信頼回復を図るならば、卸業者まかせにするのではなく、顧客に料理を出すレストラン自身が責任を持って、産地確認の体制を整備すべきだろう。
だが、現実の対応はむしろ逆になる可能性もある。「悪天候などによってメニューに表示している産地で収穫できなかった場合、近隣で収穫されたものを使うことがある。最近の流れだと表示偽装とされてしまうので、工夫する。それが今回の教訓だ」(外食首脳)という。
仮に「工夫」によって食材の産地表示をなくしたり、あいまいにしたりすれば、トレーサビリティ(産地などの追跡可能性)の流れに逆行する。明らかに、おかしな「教訓」だ。
2003年、米国でのBSE(牛海綿状脳症)問題に端を発して、日本でも食の安心・安全が一段と叫ばれるようになった。それからちょうど10年。誤表示対策として表示内容が後退すると、せっかく整備されたトレーサビリティのチェック体制が形骸化してしまいかねない。
今回、消費者庁の主導するガイドラインが、サプライチェーン全体を対象とし、逃げ道のないルールを作れるかどうか。同庁は「消費者や同業他社からの情報提供が頼りだが、ガイドライン策定後に違反が見つかったら厳罰に処す」としている。
失った消費者の信頼を取り戻すには、メニュー表示のルール作り、これまでの慣行の見直し、チェック体制の整備など、行政だけでなく業界全体を巻き込んだ抜本的な見直しが不可欠だ。