全国のホテルに波及、メニュー偽装の根因 関西の名門に端を発した大騒動。業界は戦々恐々

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「偽装と指摘されても仕方ない」。阪急阪神ホテルズ系列のレストランでメニュー表示と異なる食材を使っていた問題。出崎弘社長(当時)は10月28日、それまでかたくなに否定してきた偽装の一部を認め、辞任を表明した。関西の名門で起きたメニュー“誤表示”問題は、新体制下で収拾を図ることになる。

ただ、今回の騒動を振り返ると、結局、何が根本的な原因だったのか、判然としないままだ。

会社側は当初、各ホテルのサービス、調理部門の連携不足や表示の重要性への理解不足を主因に挙げた。組織再編に伴う「風通しの悪い職場風土」(出崎氏)も背景にあったと指摘した。一方で、一部のメニューは納入業者に問題があったとするなど、メニューごとに説明が異なった。「採算のために組織的にやっているのではないか」(高級レストラン幹部)との見方は消えず、根本的な原因も明らかにならない中、事態は幕引きに向かっているように映る。

あいまいな表示ルール

「根因はメニュー表示の難しさに行き着く」。あるホテル幹部はそう話す。メニュー表示は現物より著しく優良と消費者に誤解させた場合、景品表示法の「優良誤認」とされ、措置命令が出される場合がある。だが、その判定に明確な基準はない。

今回の問題を受け、各地のホテルやレストランであらためて調査を行ったところ、近鉄ホテルシステムズ系列のホテル、JR四国の子会社が運営するホテルなど、全国で同様のケースが相次いだ。線引きのあいまいさが、メニューの過剰表現のベースにあるとの指摘は根強い。

しかし、別のホテル関係者は「2006年ごろから食の安全意識が高まり、多くのホテルは対応を強化してきた。メニュー表示がほったらかしになるなど基本的にありえない」と語る。阪急阪神ホテルズはこれまで、メニューのチェック体制を整えていなかった。ルールがあいまいな中、「より厳格に社内に基準を作る必要がある」(ホテル関係者)という意識の欠如が今回の事態を招いた。

さらに世間から批判を浴びたのが出崎氏の対応だった。初めて誤表示を公表した10月22日の会見には出席せず、以後の会見でも、「偽装でなく誤表示」と繰り返した。危機管理専門家の土屋達彦氏は「偽装かどうかは客が判断すること。基本姿勢が欠けている」と指摘。出崎氏自身、最後の会見で「説明が会社サイドに立っていて、本当に謝っているのかと言われたことを最も反省している」と述べた。顧客を甘く見たことが、結局は高い代償を招いた。

週刊東洋経済2013年11月9日号

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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