さて、ESには世界で初めて量産車にデジタルアウターミラーが付く。ドアミラーをなくし、代わりにカメラが映す後方の映像を車内の左右にあるモニターで確認する仕組み。メリットは空気抵抗減による燃費向上、風切り音の低減、それからミラーよりも死角を減らすことができること。また今後映像処理によってステーを短くしたりなくしたりもできるだろうから実質的な全幅を減らすことができる。デメリットはコストアップ(ESの場合、最上級グレードに21万6000円のオプション)、ミラーほど画質がよくない、故障のリスクなどだろうが、コストについては車両ごとにミラーのデザインをする必要もなくなるし、普及すればミラーと同等かそれ以下にできるだろう。
デジタルアウターミラーの使いやすさは?
運転してみると、最初は後方確認する際に車外を見てしまう。しかしそこには(先端にカメラが付いた)ステーしかない。そうした“視線の空振り”を何度か繰り返したものの、10分後には慣れて車内のモニターで後方を確認することができるようになった。より高解像度の鮮明な映像が見られればそれに越したことはないが、現状でも必要な情報は得られる。
近頃はルームミラーもカメラ映像を映すモニターに変更されている車種が増え、ESにも備わるが、その映像と同程度の鮮明度だ。夜間には試していないが、トンネル内では輝度が自動調整されて実際よりも明るいくらいに見えた。トンネルを出入りする際の急激な明暗の変化にも対応していた。左ウインカーを出せば左ミラーの、右を出せば右ミラーの映像がより広角になって確認しやすくなるのはデジタルならでは。バックギアを選択すれば両方が広角になる。
直感でしかないが、将来的には普及すると思う。試乗の後半にはまったく違和感なく使うことができた。ESの場合、デザイン性のないモニターがAピラー付け根当たりに無造作に設置され、車内に異物感を残すが、採用が増えれば慣れるだろうし、今後モニター形状やサイズ、設置場所などはあるべき姿に進化していくだろう。カメラが付いたステーが短くなるかなくなれば、エクステリアデザイナーにとっては邪魔な要件がひとつ減る。また一部のスポーツカーなど、ドアミラーでは後方確認しにくいボディ形状の車種にとっては救世主となるだろう。
ESの日本導入は、日本市場がプレミアムなFWDサルーンを受け入れるかどうかの実験要素を帯びていると思う。乗用車は長らく、エンジン縦置きのRWD(後輪駆動)がラグジュアリーで、横置きのFWDがベーシックと区分されてきた。
理由はいくつかある。まずRWDは前輪が操舵を、後輪が駆動をそれぞれで行うため、タイヤの役割が前後で分担される。このため操舵も駆動も前輪が担うFWDよりも上質なハンドリングを得られる。また後輪駆動のほうがパワーを効率よく路面に伝えることができるため、概してハイパワーなプレミアムサルーンにとってはRWDのほうが都合がよい。
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