シンカリオン、「鉄」は見ないともったいない JR各社が協力、会社の枠越えた異例のアニメ

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たとえばと問いかけてみると、鈴木氏の目はいっそう輝きを増す。「最近の例で言いますと42話のグランクラスの回ですね」。

誕生日プレゼントに研究所からグランクラスの乗車券をもらった主人公のハヤトは初めて味わう新幹線の「ファーストクラス」に大興奮する。グランクラスのダイニングテーブルを称して「こんな机で毎日勉強できたら国語や算数の成績も、大宮駅出発号下りの加速なみにグングン加速しちゃいますよー!」というせりふもあるのだが、そんな机があるのならば、ぜひ発売してほしいとハヤトと年の近い子どもを持つ親は思ったに違いない。もちろん、筆者も心底そう思った。

【2018年11月23日11時09分追記】初出時、誕生日プレゼントの送り主に誤りがありましたので、上記のように修正いたしました。

そんな親垂涎のダイニングテーブル、そしてリクライ二ングシート、持って帰れる雑誌『トランヴェール』などの中でもいちばんリアリティを出したのは「軽食」だと鈴木氏は言う。現在の食事をそのままに描くのはもちろん、ハヤトが洋と和の選択肢から「和軽食」を選ぶには意味があるという。それは新幹線が通る東北・北海道の季節感豊かな食材が詰まっているからだという。筆者もわざわざ一時停止にしてハヤトの食べる和軽食をじっくりとチェックしてみたが、「これは軽食ではない!」と憤慨しそうなほどに豪華な食事であった。

JRグループならではの、こだわりの貴重なシーン

京都鉄道博物館の扇型車庫から新幹線500系が出発 ©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS

こだわりの箇所はグランクラスだけでは終わらない。たとえば23話の京都鉄道博物館からの出発シーン。当初は暗闇からの出発だったものの、大宮の鉄道博物館にある転車台からの出発シーンの迫力に負けぬよう、間近で扇型車庫をロケハンし大迫力のシーンを作り上げたという。あの角度から扇型車庫を見ることができるのは、たいへん貴重なシーンであると自負しているそうだ。

また高い安全性を提唱するJRグループならではのリアルな復旧シーンは26話で見られる。

壊れてしまった超進化研究所のトンネルを、急いで復旧するシーンがある。復旧終了と同時に「目視」「通り確認」「軌間確認」「高低確認」と喚呼した後の、高らかな「線閉解除!」宣言は、鉄道を題材にしたアニメとしてJR各社の安全対策を正確に表現したかったからだという。

また小道具にもシンカリオンらしいこだわりが見られる。ハヤトの誕生日に研究所が贈ったのはグランクラスの乗車券だったが、仲間たちがハヤトに贈ったのはハヤトが生まれた2007年10月の時刻表である。交通新聞社に当時の時刻表を借りて再現したものだ。

ハヤトは「自分が生まれた時に、どんな電車がどの区間を走っていたのか、想像するだけでワクワクする!」と大喜びしているが、子どもの生まれた年のワインを買う習慣などに加えて、子どもが生まれた月の時刻表を買っておく、というのも、なかなかオツなものではないだろうか。

ジェイアール東日本企画の鈴木寿広氏。年末から登場する新キャラのモデルに(筆者撮影)

シンカリオンのドラマはまだまだ続く。年末にかけてもこだわりのある楽しい仕掛けをたくさん用意していると鈴木氏は教えてくれた。現時点で発表できる仕掛けだと、クリスマスには、JR東海のあのCMが使われるらしい。ハックルベリーエクスプレスなど昔の新幹線のCMを定期的に使っている流れで「クリスマスと言えば、あのCMをやらずして何をする!」という結論に至ったそうだ。

ちなみに今回シンカリオンの舞台裏を教えてくれた鈴木氏は、年末から出演する新キャラ「倉敷ヤクモ」のモデルになっているという。スタイリッシュでクールな容貌からは想像つかないシンカリオンへの熱い気持ちを持つ鈴木氏、いったいどんなキャラクターとして出てくるのか、その回も楽しみでならない。今後も作り手たちの遊び心満載のこだわりは続いていくのだ。

さとう ようこ ライター、宣伝プランナー

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Yoko Sato

美術大学卒業後、クルマ会社のハウスエージェンシーにて広告宣伝・販売促進のクリエイティブディレクターを務める。転職した広告代理店に勤務していたときに担当していたゲーム会社から受託し、シナリオライターに。その後、顧問として家庭用ゲームソフトの広告ディレクターおよびコピーライターとなる。現在はゲーム会社出身のママ友に誘われ、エンターテインメント系デザインプロダクションにライター&プランナーとして参加している。

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