シンカリオン、「鉄」は見ないともったいない JR各社が協力、会社の枠越えた異例のアニメ

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そんな結果を踏まえ、ロボットの胸に新幹線の先頭車両があしらわれているデザインにした。これで、ロボットが新幹線の変形だということが一目瞭然となる。

一方で、成熟したロボットアニメーションの世界では、目の肥えた大人のアニメファンの鑑賞にも耐えうるデザインを実現することが重要である。チームメンバーの多くが「機動戦士ガンダム」や「エヴァンゲリオン」のファンだったこともあり、「大人が見ても格好いいロボットものにしよう」と改良を重ねた。結果できたのが、現在のシンカリオンのデザインである。かくしてE5系の「シンカリオン」のプラレールが完成した。このおもちゃが爆発的に売れた。

その実績を引っさげて、鈴木氏はJR西日本に出向いた。JR西日本の新幹線車両をシンカリオンのプラレールにラインナップするためである。シンカリオンのおもちゃがどのように市場に受け入れられ、多くのファンを獲得していったか丁寧に説明し、許諾を得ようとしたのだ。

jekiは、JR東日本グループの広告会社としてアニメや映画を手掛けてきた。けれども親会社の本業である鉄道や新幹線を直接起用したコンテンツはこれまで作ったことがなかった。

将来の鉄道ファンを増やしたい

「シンカリオン・プロジェクトを通じて、将来の鉄道ファンを増やしたいんです」

鈴木氏のこの言葉は、JR西日本に届いた。続いてJR九州やJR北海道にも「シンカリオン・プロジェクト」への協力に関する許諾をもらった。残るは、東海道新幹線を有するJR東海である。

日本全国のJRグループ各社の賛同が得られていること、すでに発売したシンカリオンのプラレールが爆発的に売れていること、子どもたちへの浸透度が高いこと、そんなプラスイメージを持って話に臨んだ。ここで鈴木氏は運命の人と出会う。窓口になってくれた事業推進本部の担当者がシンカリオンに対して熱い理解を示してくれたのだ。

鈴木氏たちの示す突拍子もない話に対してワクワクし、自ら社内の調整役を買って出てくれた。鈴木氏はしみじみと言う。「その時々にJR各社の担当者さんが快い返事をしてくださったからこそ、今のシンカリオンはあります」。

JR東海は、その担当者を中心にシンカリオンをビジネスにつなげ、名古屋のリニア・鉄道館でも現在シンカリオン展を開催中だという。

第26話の保線シーン。第1話の同シーンは庵野秀明監督が絶賛 ©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS

さて、シンカリオンがなぜ成立したのか、その謎が解けたところで、次は大人でも納得するシンカリオンのこだわりについて質問をしてみた。

前述のエヴァンゲリオンとのコラボ回。庵野秀明監督がシンカリオンの初回を観て「あれは、いい」と発言した。その理由が「保線シーンから始まるのが、とてもいい」だったように、マルチプルタイタンパーが稼働する深夜の保線現場のような、大人が見ても「これは……」と、うなってもらえる仕掛けを用意しているという。

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