《介護・医療危機》認知症悪化、入院困難…。厳しさ増す高齢者の生活
【Aさんの場合】女性・76歳・要支援2
千葉市内の市営住宅で独り暮らし。リウマチを患い、自分で調理や掃除ができない。2006年10月に、要介護1から要支援2になったことで、1回当たりのヘルパーの訪問時間が減少。回数を増やしてカバーした。
千葉市内の市営住宅で独り暮らしの山田登代子さん(仮名、76)はリウマチによるひざ関節の変形のために、すり足でしか歩くことができない。手の指もほとんど曲がらないため、買い物に出かけるときはリュックサックを背負う。近所のスーパーまでは、普通の人の4倍の時間をかけてゆっくりと歩く。唯一の楽しみは、特別養護老人ホームでの週1回のデイサービス(通所介護)で、その日だけは顔見知りの友人と歌やゲームで楽しく過ごす。
だが、「デイサービスから帰ってきて一晩寝て朝を迎えるとがっくりくる」と山田さんは言う。
現在の心配事は心臓の持病および白内障の悪化だ。狭心症の発作はいつ起こるかわからない。最近、心臓の検査で異常が見つかり、ホルター心電図(24時間心電図)を体に着けたまま、1日を過ごした。また、最近は視力が低下してきており、治療が必要だと医師に言われている。しかし、以前に目を手術した病院は、タクシーで片道1万円もかかるため、通うのを躊躇している。
山田さんは肢体不自由で身体障害者2級の手帳を持っているが、現在の介護度は、なぜか要介護状態の手前である「要支援2」にとどまっている。従来の要介護1から要支援2に区分が下がったのは2006年10月。認知症がなく、受け答えもはきはきしていることもあり、厚生労働省が導入した新しい介護度の区分では「要介護状態にならないための予防が必要」とされたのだ。
山田さんには介護サービスが必要不可欠だ。手が不自由で家事ができないために、週に3回、ヘルパーに来てもらい、調理や買い物、掃除をお願いしている。入浴も自宅ではままならないため、週に1回、デイサービスのときだけ入る。
しかし、要支援2になったことで、1回当たりのヘルパーの訪問時間が減った。そのため1品減らして調理の時間を短くしてもらっている。
山田さんは万が一、具合が悪くなった場合への対処も欠かさない。ベッドの脇にある緊急ボタンを押すと、市が委託している安全センターを経由して、救急隊につながるようになっている。また、相談用のボタンと緊急のボタンが付いている専用電話もテーブルの上に置いてある。身寄りのない単身高齢者にとって、急病は差し迫る恐怖でもある。
年末年始の備えも怠らないようにしている。今年は12月29日から31日までの3日間を、特養ホームにショートステイ(短期入所)する。ヘルパーが来ない正月三が日は、おせち料理を配達してもらって食べる。また、体の調子がよければ、スーパーに買い物に行くつもりだ。食べ物を買いだめしておくために、最近、冷蔵庫も買い替えた。
市内の地域包括支援センターで山田さんのケアプラン作成を担当する社会福祉士の加藤久美さんは、「現状で可能な生活を送り続けようと懸命に努力している」と山田さんを高く評価する。加藤さんは手の不自由な山田さんに代わって、市営住宅の更新手続きも行う。山田さんが在宅生活を続けるかぎり、加藤さんはしっかりとサポートしていく考えだ。