中間決算に透ける踊り場、業績は減速鮮明に 業界内で「勝ち組」「負け組」とに二極化

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──ソフトバンクが矢継ぎ早に手を打っている。

通信担当 ソフトバンクグループの中間営業利益は投資事業の好調で1兆4207億円(62%増)。12月19日に予定する通信子会社の上場はさらに利益の押し上げ要因となりそうだ。通信計測器のアンリツも好採算の5G関連の計測器が動き出し、中間営業利益が急増。通期でも42%増と大幅な回復を見込んでいる。

──昨年に引き続き、データ改ざんやリスク管理の甘さが目立った。

自動車担当 免震・制振オイルダンパーの検査データを改ざんした油圧機器メーカーのKYB。品質不正で中間営業利益は113億円の赤字(前年同期は110億円の黒字)に転落した。

精密機器担当 オリンパスは、一部内視鏡に関する米国での罰金の引き当てや、コンプライアンス問題を抱えた業績不振の中国子会社の訴訟費用などがかさみ、中間営業利益は92%減になった。

重工担当 川崎重工業は米ニューヨーク州向けを中心に鉄道車両で、165億円の損失を計上した。3月にも130億円の損失を出しており、金花芳則社長が「鉄道車両事業からの撤退もありえる」と明言した。

造船・重機大手の三井E&Sホールディングスはインドネシアの火力発電所工事で、プラントエンジニアリング大手の千代田化工建設はアメリカのLNG(液化天然ガス)事業の採算管理で失敗し、赤字転落。千代化は中間営業利益で962億円の赤字を計上、継続前提に疑義注記がついた。全体的に海外の大型案件がマイナス要因になる事例が目立つ。

スーパーは明暗が分かれる

──リストラが一巡した電機業界の現状は?

電機担当 注目はソニー。中間営業利益は4345億円(20%増)、通期の見通しは、減益から増益に転じた。牽引しているのがプレステ4の月額会員サービスや金融、スマホカメラ向け半導体だ。日立製作所は堅調で最終益8%増の計画は達成できそう。

三菱電機は中国向けのFAシステム機器が失速し、中間営業利益が1259億円(17%減)に。通期でも減益の見通しだ。パナソニックも原材料高騰に加え、テレビなど家電が不調。車載電池の大型投資による固定費増も負担で、中間営業利益は0.7%減と減速している。通期では増益予想を変えていないが、下振れの可能性がある。

シャープは親会社・鴻海精密工業が運営するECサイトでテレビを安売りしすぎて、ブランドを毀損した。ただ、部品を共同調達していることもあり、通期は24%増に上方修正した。

──3月期決算は少ないが、流通業界はどうか?

流通担当 スーパーでは東京・多摩を地盤とする、いなげやが苦戦している。人件費や光熱費に加えて、システム関連費の増加が重く、中間営業利益は1億円の赤字に転落した(前年同期は11億円の黒字)。他方で埼玉地盤のヤオコーは、総菜をブラッシュアップして、1人当たりの買い上げ点数が増加。中間営業利益は108億円(7.9%増)と明暗が分かれている。

家電量販店担当 ヤマダ電機は従来の家電に加え、家具や雑貨を扱う「家電住まいる館」への改装を進めている。だが、改装費用負担が重かったうえ、転換した店舗が苦戦。中間営業利益は大幅な減益になった。

こうした状況をJPモルガン証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストは「為替が円安にもかかわらず、思ったほど上方修正が出ていない印象」と話す。「世界の景気拡大が終盤に差しかかる中で、体力・経営力があり業績を出せるところと、そうではないところで優勝劣敗が明確化している。2019年度の業績はより減速するだろう」(同)。

後に振り返れば、2018年度は企業業績の転換点になっているのではないか。

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