電車広告料金、紙とデジタルどっちが高い? 相互直通する会社間で価格に違いはあるのか

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西武鉄道が2014年に社内イベント向けに実施した「妖怪ウォッチ」のラッピング電車。車体への広告は注目を集める(撮影:尾形文繁)

こうした車内広告だけではない。車体の外側も広告スペースとして活用される。山手線の場合、1編成に2週間の車体広告を行った場合の料金は600万円。別料金となるが車体広告に車内広告を組み合わせて、車両のすべてを自社の広告で埋めることも可能だ。ユニークな車体広告は新聞やテレビで話題になることも多く、波及効果も高い。

視点をJR以外に広げてみよう。東京メトロ(東京地下鉄)や東京急行電鉄など首都圏の私鉄各社でも新型車両導入に合わせ、ドア上に液晶ディスプレーを設置してトレインチャンネルのような動画CMを流している。JRだけでなく私鉄各社にも同じCMを流すことができれば、認知度は飛躍的に高まる。

しかし、各社ごとに仕様が少しずつ異なるため、複数の鉄道会社の路線に同じCMを流す場合、同じCM素材を各社の仕様に合わせて別々にデータ変換する必要があった。しかし、各社が協力して、マスターデータを各社ごとの仕様に自動変換するシステムを開発、今年7月から運用を開始している。制作コストの削減につながるため、電車内のデジタルCMがさらに勢いづくに違いない。

銀座線に広告を出すには?

続いて私鉄各社の紙の広告について。地下鉄は地上を走る電車と違い、乗客が外の景色を見ることが少ないので車内広告に目が向きやすい。中でも東京メトロ・銀座線と丸ノ内線は山手線に並ぶ広告価値の高い路線だ。東京メトロもその点は意識しており、銀座線への広告出稿は東西線、千代田線、南北線とセット、丸ノ内線も日比谷線、有楽町線、半蔵門線、副都心線とセットで広告枠を販売している。1週間の中吊り料金はどちらのセットも330万円。

東京メトロ日比谷線に導入された新型車両「13000系」にもドア上部に広告用のディスプレーが設置されている(撮影:尾形文繁)

東京メトロの路線はさまざまな私鉄に乗り入れるため、より多くの乗客の目に止まりやすいという効果がある。相互直通運転を行っている私鉄は多く、A社の路線の上をB社の車両が走っているというのは当たり前の光景だ。

基本的には私鉄各社は車内広告の営業を独自に行う。そのため、埼玉県のマンション広告が乗り入れ先の神奈川県内でも見られるという現象が頻繁に起きる。「近隣地域にしか流れない新聞の折り込み広告と違い、遠方エリアにも広告が出るのは魅力」と、ある私鉄の担当者はメリットを強調するが、関心を持たない乗客も多いかもしれない。

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