電車広告料金、紙とデジタルどっちが高い? 相互直通する会社間で価格に違いはあるのか

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また、相互直通運転を行う私鉄同士で広告料金が異なるケースも少なくない。たとえば、半蔵門線を介して相互直通運転を行う東急電鉄と東武鉄道の場合、平日2日間の中吊り料金が、東急(田園都市線・大井町線セット)が50万円、東武(半蔵門線直通型)は26万円と2倍近い差がある。ある企業の広告担当者は「東武に広告を出すほうが安上がり」と言うが、はたしてそうか。

総合交通広告代理店「アド・スマイル」の調査によると、半蔵門線三越前駅に平日乗り入れる車両は上下合わせ東武が132本、メトロが144本、東急が306本だという。つまり、東武と東急の列車の運行本数は2倍近く違う。東急の車両には東武線に乗り入れないものがあるが、逆に大井町とセットになっていることを考えると、東急と東武の広告料金の差は運行本数の差である程度は説明できそうだ。

なお、最近では、東武鉄道、西武鉄道、東京メトロ、東急電鉄の4社が共同で東上線、池袋線、有楽町線、副都心線、半蔵門線、東横線、田園都市線に広告を掲出する「SHIBUライナーセット」という企画も行われている。また、首都圏の鉄道事業者11社局が共通の広告を首都圏全域に掲出する「中吊りドリームネットワーク」という取り組みもある。

スマホを見ている人は情報感度が高い

雑誌の広告はすっかり影を潜めてしまったが、「代わりに食品や日用品の広告が増えている」とjekiの星野局長は言う。「たとえばケチャップのような調味料や冷凍食品の広告が目立つ」。これは、共働き世帯が増え、家庭の主婦が電車通勤をするようになった結果といえる。電車広告から世の中のトレンドを知ることもできる。

西武鉄道の新型車両「40000系」では通路の上にもディスプレーが設置されている(撮影:尾形文繁)

電車内でスマホを見ていると、周囲が目に入らないようにも思われるが、そうでもないようだ。jekiメディア営業部の宮本守担当部長は、「スマホに没頭している人は別だが、スマホを見ている人は、何もせずぼんやりしている人に比べ、周囲の情報に対して感度が高い」と言う。この点に着目して、今後、スマホと連動した車内広告が展開される可能性もある。

デジタルの時代になっても紙の広告は健在だ。両者の長所を活用しながら、画期的な広告を目にする日がやってくるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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