チェコで台頭「新規参入組」鉄道会社の光と影 サービス向上も、価格競争「我慢比べ」に懸念
8月12日付記事(「欧州の『新参鉄道会社』が悩む機関車の選び方」)でも説明したが、民間企業にとって、新型機関車を自前で保有することは、とりわけ初期費用が多く発生するため簡単ではない。レギオジェットが新型機関車の追加導入に踏み切ったということは、それだけ業績が好調であることの証しとも言える。
同社はまた、運行本数の増加に伴い、客車についても追加導入を検討している。同社で現在使用している客車の多くは1970~1980年代に製造され、主にオーストリアやスイスで使用された中古車をレストアしたものだ。これらの国で使用されていた客車は非常に手入れが行き届いており、追加導入を検討している客車も、引き続き両国の余剰車両を導入するものと思われる。
オープンアクセスの問題点
鉄道、バスともに好調な業績を示しているレギオジェットだが、問題がないわけではない。
2018年5月、レギオジェット社はプレスリリースにて、昨年チェコ市場へ参入したフリックスバス(Flixbus)社が、ほとんど営業利益の出ない不当に安い価格で販売しているとして、欧州議会へ申し入れを行ったことを発表した。フリックスバス社はこれに対し、適正な市場価格で販売しており問題はないとのコメントを発表しているが、レギオジェット社は、行きすぎた価格競争は安全性や労働環境の悪化を招くと主張している。
こうした問題は、日本においても格安ツアーバスの事故などで問題となったが、欧州各国でもこうした不平不満は多くある。もちろん、同じことは鉄道にも言える。オープンアクセスによって多くの民間会社が参入したチェコでは、価格競争が各社の「我慢比べ」となり、いずれ経営が悪化する企業も出る可能性があるとして、チェコ鉄道は警鐘を鳴らしている。
競合他社が多数参入したことで、それまで市場を独占していたナショナルオペレーターのチェコ鉄道が、近年積極的なサービス向上に努めていることは誰の目にも明らかだ。しかし価格については、どこかのタイミングで線引きをしていかなければサービスを維持できなくなり、本末転倒となる恐れがある。
競争によるサービス向上や市場の活性化がオープンアクセス本来の目的であったが、それが安全を担保にした生存競争のようになってはならない。特に価格に関しては、一定のラインで歯止めをかける法改正を行う必要性を感じる。
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