チェコで台頭「新規参入組」鉄道会社の光と影 サービス向上も、価格競争「我慢比べ」に懸念

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実際の運行は2010年4月に開始され、列車の名称は社名と同じレギオジェット、車体の色はスチューデント・エージェンシー社が運行するバスと同様、黄色をベースとした塗装となった。

2016年には、それまでスチューデント・エージェンシーの名称で運行されていた路線バスもレギオジェットのブランドへ変更、鉄道とバスを同じネットワークに組み込むことによって、チェコを中心とした周辺各国への広域なネットワークを構築した。

躍進を続けるレギオジェットの牽引役となっているプラハ―ブラチスラヴァ間の路線は、9月2日から新たにもう1往復の運行を開始した。運行本数拡大に伴い、同社は機関車を2台追加で導入した。

車両もリースから自社保有へ

シーメンス製の機関車「ヴェクトロン」が牽引するレギオジェットの国際列車。ELL社から5両をリースしている(筆者撮影)

同社の機関車は、これまで自社保有の旧型車9両のほか、リース会社のELL社(European Locomotive Leasing/本社オーストリア)から5両、別の貨物会社から3両のシーメンス製機関車「ヴェクトロン」を借り入れており、リースと自社保有がほぼ半々の陣容だった。だが、今年4月に2両のボンバルディア製新型機関車「TRAXX」を購入し、次第に自社保有の新型機関車が増えつつある。

2018年に導入したばかりのボンバルディア製「TRAXX」。主に国際列車に使用している(筆者撮影)

4月に導入した2両の機関車はリースの機関車を返却する目的で導入された。今回新たに導入した2両は列車本数増加に伴う純粋な追加分で、自社所有の「TRAXX」は合計で4両に増えた。同社はボンバルディア社と20両分のオプション契約を結んでいる。オプション契約とは、たとえば10両のうち半分の5両は正式に契約し、残り5両は追加が必要となったとき、あるいは資金的なメドが立った段階で正式に発注するという契約だ。

レギオジェットの現在の主力である旧型の機関車162型。もともとはイタリアの私鉄で使用されていたものを買い取った。直流電化区間でのみ使用されている(筆者撮影)

現在、自社保有の旧型機関車は電化方式の関係で、プラハとスロバキアのコシツェを結ぶルートを中心に使っているが、リースの「ヴェクトロン」は他国の方式に対応しているため、主にウィーンなどへの国際列車に使用している。今回導入の「TRAXX」も、欧州各国の電化方式に対応しており、ブラチスラヴァとウィーンへ運行している。

レギオジェットは、将来的にはさらに他国へも足を延ばしたいと考えていることから、いずれ保有する機関車をすべて「TRAXX」へ置き換えることも視野に入れ、20両のオプション契約を結んだのだろう。

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