なぜ沈まない?「水陸両用バス」のひみつ 忍者のように湖をスイスイ走る仕組みは?

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コーワテックでは、2008年の1号車製造以来、水陸両用バスを9台(定員42名の大型8台、定員22名の中型1台)を製造してきた。この間、細かい部分のマイナーチェンジは繰り返してきたが、9台目となる忍者バスは、はじめてのフルモデルチェンジを実施した。

忍者バスの操縦席(筆者撮影)

具体的には、これまでどちらかというと角張っていたボディを丸みの帯びた形状にしたほか、操作が面倒だったスクリューの上げ下げをやめ、固定式にするなどした。

公道を走る車両は幅2.5mまでという制限があるため、水陸両用バスは車高の割に幅が狭く、風などの影響を受けやすい。そのため、水上での復原性(バランス)が大きな課題となるが、「今回、ボディの形状を変えたことにより、船としての復原性が改善された」(設計)という。「従来型は、風の影響を受けないようにするため窓は吹きさらしだったが、復原性の改善により、新型は窓にビニールカーテンを取り付けることができた」(設計)というくらい、微妙な調整が必要な世界なのだ。

なお、忍者バスの屋根の上にはレーダーが取り付けられている。設計時にコーワテックは、屋根の上にレーダーを取り付けるのは復原性の観点からお勧めできず、また、今まで取り付けた例がないと伊豆箱根鉄道に伝えたが、「芦ノ湖は高所に位置し、わずかな時間で霧に覆われることがある。安全性の確保からレーダーは必須であり、無理を言って取り付けていただいた」(伊豆箱根鉄道船舶課長の竹澤正男さん)という経緯がある。ちなみに、レーダーに関して忍者バスの船長を務める永井幸一さんに聞くと、「この半年で何度か役に立ったことがある」そうだ。

忍者バスの車両本体への投資額は約1億円。加えて、入水・出水時に使用するスロープや有蓋車庫など地上施設も整備したが、地上施設の投資額は公表していない。

肝心な乗り心地は?

さて、忍者バスはどのようなアトラクションであり、どのような乗り心地なのか。百聞は一見にしかずということで試乗させていただいた。

箱根園の乗り場に到着すると、くノ一の装束に身を包んだガイドが出迎えてくれた。忍者バスは、かつて戦国武将の小田原北条氏に仕えたとされる忍者をコンセプトにしており、湖面を進む水陸両用バスの姿を忍術の一つである「水蜘蛛の術」に例えている。

次ページ所要時間は陸上25分、湖上15分
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