なぜ沈まない?「水陸両用バス」のひみつ 忍者のように湖をスイスイ走る仕組みは?
また、ボディの製造に関しては造船に関する知識が必須だが、「設計をスタートしたときには、船に関する知識はほぼゼロだった」(設計)といい、付き合いのあった東海大学海洋学部や造船会社からの協力を得て、知識を吸収しながら設計を進めた。「船体の強度を保つための骨組みの入れ方だけは、どうしてもわからなかったので造船会社に設計を依頼したが、その他はほぼすべて自前で設計を行った。自動車と船の法律を照らし合わせて、より厳しいほうの基準に適合するよう作業を進めなければならず、大変だった」(設計)という。
「水陸両用車は造船会社が船をベースに開発するケースが多い」(コーワテック顧問の久我善信さん)ことからも、自動車架装メーカーが水陸両用バスを一から開発したのは驚くべきことだった。
製造期間はどれくらい?
1号車は発注から納品まで、およそ2年かかった。では、現在はどれくらいで納品が可能なのだろうか。
「当社の水陸両用バスは、いすゞのトラックをベースに使用することが多いため、このトラックを使うことが前提となるが、製造の仕掛かりから完成まで、およそ7カ月いただいている」(コーワテック営業部課長の大川原孝さん)。
具体的な作業工程としては、まず造船所で船体部分を造るのに3カ月かかる。これを造船所またはコーワテックの事業所でベースになるトラックに接合する。その後、バスの屋根や座席等、上物部分の製造に3カ月かかり、最後の検査・登録に1カ月を要する。
ただし、「最近、造船所のドックが混み合っていることが多い。本来の造船作業の合間にやらせてもらうので、ドックの空きのタイミングによっても納期が変わる」(大川原さん)そうだ。
ちなみに、トラックと船を合体させることから、水密構造がどのようになっているのかが気になるので聞いてみた。「一般の船舶と異なるのは、自動車のエンジンの動力を車輪に伝えるシャフトの部分。ここには一般的にエンジンに異物の混入等を防ぐために使われるオイルシールと呼ばれる部品を用いている。エンジン側のシャフトと車輪側のシャフトを、船体を貫通する部分でオイルシールを介してつなげることで水密を確保している」(設計)
無料会員登録はこちら
ログインはこちら