ホリエモンが、もしメディアの経営者だったら 堀江貴文氏インタビュー(下)
――アマゾンも自社でスタジオを持ってドラマを制作しています(関連記事:アマゾンがテレビ業界に殴り込み)。米国はネット企業がコンテンツ制作に参入して、業界をかなりかき回していますが、日本にはそういうプレーヤーがいないですよね。
堀江:でも、これから変わりますよ。今度、ドリパスという、ヤフーの子会社になった会社と組んで、僕の小説『拝金』を映画化するのですが、これにヤフーが100%出資します。ヤフーは1年半前に経営陣が大幅に若返って、「爆速」というコンセプトで経営しているので、変わってきています。映画制作も爆速の一環ですよ。
ドリパスという会社は、みんなが見たい映画をネットでリクエストして、たとえば500人集まったら映画館を貸し切って見られるというサービスを提供する会社です。映画館からすると、確実に席が埋まるので効率がいい。そういうネット企業がコンテンツ制作に乗り出してくるので、映画業界に風穴が開くのではないでしょうか。
映画のビジネスモデルの難しいところは、配給です。東宝がだいたい牛耳っていて、年間の邦画ランキング20位中、16作品ぐらいが東宝ですからね。
――ドリパスみたいな動きが水面下で出てきているなら、いろいろ変わるかもしれないですね。
堀江:間違いなく変わるでしょう。
メディアの価値とは何か
――われわれはオンラインメディアを運営していますが、オンラインメディアはどうやったら稼げるでしょうか。有料課金は、日経新聞電子版以外はあまり成功していません。堀江さんが経営者ならどうしますか。
堀江:僕は今度、「NewsPicks」のアドバイザーになるのですが、ああいうニュースキュレーションという形が、ひとつの軸になっていくと思います。いいことを言っている人が、いろいろなところに分散していますよね。
――確かに。
堀江:あと、今の時代にストレートニュースはあまり響かないと感じています。
――価値が落ちていますよね。
堀江:なぜ価値が落ちているかというと、やっぱりソーシャルメディアの時代になって、当事者が発信するようになってきたからです。たとえば、自治体の市長が積極的にツイッターやフェイスブックを使って発信していっている。もうメディアをすっ飛ばして、ダイレクトにフォロワーに伝えています。この傾向はますます広まっていく。
では、メディアの価値とは何なのか。メディアの本質は、情報の仲介者ですよね。でも、仲介する必要がなくなった。ある意味、中抜きですよ。そこにあえて仲介者がいる価値って何だろうと考えたら、ニュースを翻訳することでしょう。
――池上彰さんのような。
堀江:大前研一さんとか。要はニュースをわかりやすく伝えるということが大事で、そういうメディアを作ればいいのになと思います。だから、僕はやりますよ。20人ぐらいの識者を集めて、市民のためのメディアを作ります。つまり、ニュースの解説をするのですが、ワイドショーみたいな可もなく不可もなくというコメントではないですよ。
今日もテレビをたまたま見ていたら、ホテルのメニューの偽装事件をやっていました。芝エビじゃなくて、なんちゃらエビを使っていた、みたいな話をねちねちと。それを識者の人たちが「とんでもないですね」「ありえないです」とかコメントして。でも、僕らが聞きたいのはそこではない。ぶっちゃけ偽装されて困るかといったら、たいして困らない。
多くの会社がおそらく同じようなことをやっていて、今、慌てて社内を調べさせていると思いますが、なぜそういうことが起きてしまうのか、背景を調べなければいけない。
消費者だって、マグロのトロがその値段で食えるのかとか、ちょっと考えようよと。明らかにおかしいじゃないですか。どういうふうにそのニュースをとらえるべきかを、解説してほしいですよね。