「自動運転バス」今できること、できないこと 無人バスに安心して乗ってもらうためには?

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今回の実験についてSBドライブの担当者は「どうすれば無人のバスに安心して乗ってもらえるか、どんなサービスを行うかなど、実際の運行という最終形にいかに近くできるかが大事な点」と語る。アプリやバーチャルガイドはその一環だ。

歩道に寄せてバスを停める「正着制御」の様子(記者撮影)

バスの自動運転技術は「かなり確立されてきている」とSBドライブの担当者は言う。今回の実験では、専用道など大半の区間で運転手がハンドルを握ることなく時速30km程度の速度で自動運転。途中のバス停では、停車する際に車体を歩道にぴったりと寄せる「正着制御」を行うが、みちのりHDの広報担当者も「タイヤをこするかもしれないので、バス会社ではこんなに寄せるなと運転手に言うんですよ」と驚くレベルだった。

また、途中2カ所の交差点では「信号協調システム」によって信号の情報を受信、切り替わるタイミングを予測して急ブレーキを回避。専用路を歩道が横断する部分では、街灯に設置したセンサーによって歩行者を検知し、接近するバスに知らせるシステムも試験している。

乗客対応をどうするか?

今のところ、一般道での自動運転は「路上駐車をよける際は、対向車の接近を確認するために人間が一時的にハンドルを握る必要がある」(SBドライブ担当者)など、まだ技術面で数々のハードルがある。その点、障害物のない専用道を通るバスは早期の実用化に向いているといえる。

歩行者検知用のセンサー各種を取り付けた街灯(右)(記者撮影)

だが、乗客サービスにかかわる部分での課題は少なくなさそうだ。たとえば、自動運転バスは人間の運転手なら容易な「バス停で待っている利用者を見つけて停車する」ことは難しいという。今回の実験では、専用アプリの入ったスマホを持つ人の数をカウントしてバス停の待ち人数を表示するシステムを試行していたが、これだとスマホを持つ人しか認識できない。運賃決済についても、今回の方式ではスマホを持たない人は利用できない。

今回の実験は走行の安全性などはもちろん、自動運転バスが利用者や運行事業者、周辺住民などに受け入れられるかといった「受容性」の検証が大きな目的だ。「ここで得られる知見は今後のキラーコンテンツになる」と関係者は言う。

バスの運転手不足が全国的に問題となる中、注目を集める自動運転。実用化に向け、今後は輸送サービスとして成立させるための研究開発が重要性を増すことになるだろう。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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