アベマTV、3年連続200億円赤字に漂う不安 藤田社長「収穫期に向け基盤固めを続ける」
アベマTVの将来について会社側は楽観的だが、外部にはそれと異なる見方もある。懸念としてまず挙げられるのが、週間視聴者数の推移だ。開局から2年半で着実に伸びているものの、2018年に入ってからは500万~600万台で微増かほぼ横ばいを行ったり来たりしている。2017年11月に元SMAP3人が出演した「72時間ホンネテレビ」でつけたピーク値(729万)はその後超えられておらず、開局当初から目標に掲げる1000万という大台はまだ見えてこない。
この点を業界アナリストから問われた藤田社長は、「すごくネガティブに、ナナメに見るとそうかもしれないが」と前置きしつつ、「世界的に注目度の高い格闘技戦を持って来るとか、そういう突飛なことはしていないし、広告もほぼ打っていない。そういう中では、順調に地固めをできていると思っている」と話した。
とはいえ、現状に100%満足しているわけではなさそうだ。「今年はレギュラー番組を拡充した一方で、『ホンネテレビ』や『亀田興毅に勝ったら1000万』(2017年5月放送)のような、世間を騒がせる特番が出せていない。年末の企画も構想中だが、今後はすごく話題になるようなものもまた出していきたい」(藤田社長)。
電通、博報堂出資の狙いは?
もう1つアベマTVに問われているのが、組織運営の舵取りだ。アベマTVの運営会社は10月23日、電通、博報堂という広告代理2社の資本参加を発表(出資比率は電通が5%、博報堂が3%)。広告拡販やコンテンツ調達で連携を深めるのが主な目的だが、「社内向けのメッセージも重視している」と藤田社長は話す。
「(サイバーも電通、博報堂も広告代理店なので)アベマTVの広告を売ってもらうパートナーでありながら、どうしても競合してしまう部分があった。現場社員の迷いも感じていた。出資関係があればそこがスムーズに行くはず。各社から1、2人の出向者も来てもらうので、それによって意思統一が図れるだろう」(同)。
合弁相手であるテレ朝との関係性も注視したい。サイバーとテレ朝両社の社内には今「一枚岩」と書かれたポスターが貼られ、連携を深める経営の意思が明示されている。「そもそも一枚岩であればこういうものを貼らなくていいのでは?」という記者の質問に対し、藤田社長は、「現状が一枚岩でないということはない」と否定しつつ、「社員に『ネット対テレビ』という、漠然とした競争意識を持たないでほしいというメッセージを込めている」と話す。
「テレビが好きで、テレビの現場で仕事をしている社員からしたら、ネットのほうが伸びていくことに不安を覚えたり、競合に思えたりするかもしれない。でもそう考える必要はなくて、(ポスターは)両社の共同事業なんだ、ということを改めて社内に強調したものだ」(藤田社長)。
アベマTVの一番のリスクはむしろ、「(サイバーエージェント本体の)広告やゲームの既存事業が失速して、先行投資を続けられなくなること」(藤田社長)だという。広告もゲームも足元は好調だが、特にゲームは市場が頭打ち状態にあり、いつまでも稼げるとは限らない。組織内の結束を固め、新たな放送局として早期に勝ちパターンを見つけたいところだ。
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